この夏の光の現象

 この夏は大気光学現象を見かける機会が多かった。

 夏という季節はいつの間にかとても過酷な苦しい季節になってしまったが,風景の美しさや空のダイナミックさがあるから,どうにかこうにか気持ちを引き上げ,救われて生きてゆける。

 この夏,7月から9月に見かけた大気光学現象。
 虹は例年より少なかったが反薄明光線を多く見かけた印象だった。


反薄明光線・ビーナスベルト・地球の影

 日没直前に見える反薄明光線は,地平線近い太陽が雲に隠され,雲の切れ間から漏れ出た光と雲の影が太陽の反対方向へ放射状に収束して見える現象。まるで,太陽がない筈の東の空から光が出ているようにも見えるため裏後光/裏御光(うらごこう)とも呼ばれる。

 反薄明光線はだいたいビーナスベルトや地球の影とセットで見えている印象だ。

 ビーナスベルトは,日の出・日の入り前後20分ほどの間に太陽の反対側の地平線に近い位置に現れるピンク色の帯のこと。夕焼けや朝焼けと同じ原理で空に残った波長の長い赤い光が,太陽の反対側の空に投影されて発生する。
 地球の影はビーナスベルトの下,地平線上に見えており,深い青あるいは濃い灰色のような色で地平線を縁取っている。

 いずれも地球が球形である事を宇宙規模で感じられる現象だ。

※ 写真はクリックで拡大


薄明光線

 最も一般的な大気光学現象ではないだろうか。

 壮大なるチンダル現象だ。
 またの名は,光芒,天使の梯子,天使の階段,ヤコブの階段,ゴッドレイ,レンブラント光線など。「ヤコブの階段」の呼び名は下記の旧約聖書が基になっている。

時に彼は夢をみた。一つのはしごが地の上に立っていて、その頂は天に達し、神の使たちがそれを上り下りしているのを見た。

『旧約聖書』創世記28章12節


 ヤコブはこの夢を見た場所に柱を立てて町を作った。


虹色の光

 環水平アーク,虹,幻日を見かけた。

 環水平アークはそれほど珍しくない現象ではあるが,太陽がかなり昇って空が明るくなってから出現するので,空が明るすぎて見逃してしまうことが多い。

 この夏は,きちんと半円を描いた虹を見る機会はなかったが,この日の夕刻は,主虹と副虹の根元と反薄明光線が同時に見えて圧巻だった。
 何枚も写真を撮ったのにみんなピンボケで,唯一スマホのパノラマで撮ったこれだけがまともに撮れていた。広い範囲を撮っているので虹の根元,特に副虹の根元はとてもわかりにくい写真になってしまったが。

大気光学現象てんこ盛り
 (2023-09-07 17:56)
 地球の影・ビーナスベルト・反薄明光線・主虹・副虹
大気光学現象てんこ盛り(2023-09-07 17:56)
地球の影・ビーナスベルト・反薄明光線・主虹・副虹

 他ブログに載せてきた空写真や気象の記録などを,今後はこのブログに載せていくことにする。

風景・自然ランキング

本の記録(2023-09)

 『源氏物語』を一旦終了し(そのうち再読するが)積ん読本などを消化。
 また,Amazon の Kindle Unlimitedで「創刊60周年 ブルーバックス特集」なる企画をやっていたため,普段だったら買わないけれどちょっと気になる本を読んだりしていた。


9月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:1568
ナイス数:39

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)感想
 砂糖が如何に奴隷貿易と一体化していたか,砂糖と紅茶の結びつきがイギリスで愛され続いた理由など,わかりやすかった。「つい最近までトリニダード・トバゴの首相であった歴史家エリック・ウィリアムズのいうとおり、「砂糖のあるところに、奴隷あり」だったのです。」とか「われわれイギリス人は、(略)地球の東の端からもち込まれた茶に、西の端のカリブ海からもたらされる砂糖を入れて飲むとしても(略)、なお、国産のビールより安上がりになっているのだ」など言葉の引用も的を射ており心に残った。
読了日:09月03日 著者:川北 稔

高瀬舟高瀬舟感想
 先日「本の要約サイト flier」にて要約が公開されたと聞いて,読んでみようかと思った。学校の生徒だった頃に国語の教科書で読んだことがあったが,内容はよく覚えていなかった。『舞姫』のような雅文体ではないので気楽に読めるし,青空文庫になっているので電子書籍なら無料だ。短い物語なのにこれを要約するのかと少々不思議。
 今も昔も変わらぬ普遍的な疑問,そして解決がとても難しい問題が主題になっている。罪とは何か。幸福とはどのような人のどのような状態であろうか。答が無い問に規則で答を与えられて我々は生きている。
読了日:09月03日 著者:森 鴎外

裏世界ピクニック7 月の葬送 (ハヤカワ文庫JA)裏世界ピクニック7 月の葬送 (ハヤカワ文庫JA)感想
 「月」とは冴月。いよいよヤバイ感じで目の前に現れる彼女をついに排除する決意を固めた空魚。彼女の大学のゼミ(文化人類学)の話は面白かった。登場する阿部川教授は著者の恩師である阿部年晴先生だとのこと。るなの声と鳥子の手,空魚の目と知識を駆使して葬送が行われた。
 物語のキーパーソンだった冴月がいなくなった世界で物語の方向性はどうなっていくのか?
読了日:09月09日 著者:宮澤 伊織

裏世界ピクニック8 共犯者の終り (ハヤカワ文庫JA)裏世界ピクニック8 共犯者の終り (ハヤカワ文庫JA)感想
 副題『共犯者の終り』で分かるがこの巻は丸々空魚と鳥子の関係についての物語。途中,空魚が1人でDS研で汀と話したり,新キャラの辻とお茶したりするが,あとは空魚が友人と恋人の違いに悩んで考え,鳥子との今後を考える。途中の空魚の考察,特に紅森との会話はとても面白かった。紅森は人の恋バナを食べて生きていそうな子だが意外と理屈っぽくしっかり物事を見て考えるタイプだとわかった。辻の裏世界への考察も興味深かった。最後の鳥子とのいちゃいちゃはかなり退屈だった。落ち着くところに落ち着いてちょっとつまらないと思った。
読了日:09月10日 著者:宮澤 伊織

山月記山月記感想
 虎になった李徴(りちょう)は旧友の袁傪(えんさん)と偶然再会する。李徴が袁傪に自分が虎になるに至った顚末を話す短い物語。李徴の自己分析とそれを受け止める袁傪は対照的な性格で,読者はどちらにも自分の一部を見ることになるのではないだろうか。漢文調の文体は格調高く美しく,しかし難しい。これを国語の教科書で読んだのは何年生の時だったのだろうか。流石に小学校ではなかった?
読了日:09月14日 著者:中島 敦

怪談の科学 幽霊はなぜ現れる (ブルーバックス)怪談の科学 幽霊はなぜ現れる (ブルーバックス)感想
怪談と言うより実話や文学作品の中から人間の不思議な行動を紹介し,それに精神医学的な解釈を加える本。1988年発売なので内容がかなり古く,今では異なった見解や解釈も多そうだ。引用作品や事例も令和を現代人たちには馴染みが薄いものが多かった。だが古今の名作はフィクションであっても精神医学的な解釈に耐えうるものでそれがリアリティになっているなどの話は興味深かった。
 様々な事例を精神医学的に解説しながら「科学的に説明できぬ事例」として乃木将軍の金沢出張の実話が紹介されており,それが怖かった。幽霊いるってこと!?
読了日:09月16日 著者:中村希明

食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病 (ブルーバックス)食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病 (ブルーバックス)感想
納豆は朝食べるのが良いか夜食べるのが良いか,運動は朝が良いか夕方が良いかなどなど,何はいつ頃食べてどう行動すれば良いなどの俗説は巷に溢れているし,経験上良いと思って実行している習慣なども人によって色々あると思う。しかし,それらが本当は正しい認識なのかどうか,現在の研究結果と照らし合わせても正しいことも多く,それが実験結果と医学的な解説により理解できたのは良かった。
読了日:09月30日 著者:柴田重信

それでも町は廻っている(1) (ヤングキングコミックス)それでも町は廻っている(1) (ヤングキングコミックス)感想
 タイトルだけは随分以前から知っていたが,同作者の『天国大魔境』のアニメ化がきっかけで読んでみた。メイド喫茶シーサイドでバイトする天然元気少女の嵐山歩鳥ちゃんを中心にまわっていく日常コメディ。実は探偵を目指しているという歩鳥は,実に憎めない性格でユーモラスで楽しい。担任の数学の先生とか幼馴染みの真田くんとか,一緒にバイトしているトシ子さんとか,周辺の人物も個性的だ。10年以上前にアニメ化されているので,そのうち配信を探してみよう。
読了日:09月30日 著者:石黒正数

それでも町は廻っている(2) (ヤングキングコミックス)それでも町は廻っている(2) (ヤングキングコミックス)感想
 温泉の話と全日本ギューニスト連盟とか。牛乳にはあられや焼きそばが合うらしいですよ,マジですか。あと死にかけた話とか紺先輩の風邪とか宇宙人とか狸のようなジョセフィーヌとか数学と探偵の共通点とか。楽しかった。
読了日:09月30日 著者:石黒正数


読書メーター

読書日記ランキング