枝垂れ桜の頃はあんなに大勢の人が訪れていた六義園は,注目される季節が終わった途端,秋の紅葉ライトアップまで静かになる。桜も紅葉も,この美しい新緑や寒さを耐える冬の姿を見てこそ心から感動できるものではないのだろうか。
花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは。
徒然草 第百三十七段(吉田兼好)
『徒然草』第百三十七段で兼好法師が書いたこの言葉の通りだ。令和の世になっても,人は盛りの花のみを好む。時代を経ても人間の本質とは変わらないものだ。
目が覚めるような新緑は見る人の心を澄み渡らせてくれる。
それほどに美しい。
よく手入れされた六義園のクマザサが風になびいて波になる様子は「いとをかし」とはこのことだと思わされる。
園内を歩いているとコミスジを見かけた。
タテハチョウ科のコミスジは,滑空するような優雅な飛び方でひときわ目を引く。こんな出会いがあるのも嬉しい。