鐙坂(あぶみざか)―文京区

台地と低地が入り交じる東京の都心部は、
美しい坂道や階段の宝庫。
散歩しながら見かけた階段や坂道の記憶を残しておこうと思う。

炭団坂を下り、宮沢賢治旧居跡を通って菊坂の谷を歩くと
本郷台地方面へ上る階段を幾つも通る。

本郷の階段

全ての階段や坂道に名前がついているわけでもないようだが、
地元の生活に根付いた階段らしい雰囲気が溢れている。

本郷の階段

鐙坂(あぶみざか)は、
やはり菊坂の谷と本郷台地を結ぶ斜面で、
先端はゆるやかなカーブを描いている。

鐙坂(あぶみざか)の名前の由来は
・鐙の制作者の子孫が住んでいた(『江戸志』)
・坂の形が鐙に似ている(『改撰江戸志』)
など。

鐙坂(あぶみざか)
鐙坂の説明板

坂の上の西側一帯には、
上州高崎藩主大河内(おおこうち)家
松平右京亮(まつだいらうきょうのすけ)の中屋敷があり、
屋敷跡地は右京山と呼ばれたとのこと。

坂上の左手には国語事典でお馴染みの金田一京助・春彦旧居跡。
右手の石垣の上には財務省 関東財務局 真砂住宅。
坂下には、100年以上の歴史を持つ銭湯や
昔ながらの雰囲気の理髪店が残る古い街並みが見られる。

炭団坂(たどんざか)―文京区

台地と低地が入り交じる東京の都心部は、
美しい坂道や階段の宝庫。
散歩しながら見かけた階段や坂道の記憶を残しておこうと思う。

炭団坂

文京区本郷4丁目の炭団坂(たどんざか)。
北北西から南南東へ下る、
あるいは北北西から南南東へ上る。
文京区の公式サイトによると、長さ約35m。

炭団坂

本郷台地と菊坂の谷を結ぶ急な坂道で、
「炭団坂」の名前の由来は、
「このあたりに炭団を商売にする者が多かった」
「急な坂で転び落ちた者がいた」
など。

炭団坂

谷底の菊坂方面には古い街並みがあり、
坂を上りきった道を真っ直ぐ歩くと春日通りだ。

台地の北斜面に位置する坂でジメジメしていたため、
今のように美しく整備される以前は、
雨上がりなどに本当に転げ落ちた人もあったであろうと
炭団坂の説明板に書かれていた。

「炭団(たどん)」なんて現代の生活にはほぼ無縁なもので、
若い方は聞いたこともなかったりするのではないだろうか。
炭(木炭・竹炭・石炭など)の粉末を、
フノリ(布海苔/フノリ科の海藻)などの結着剤と混ぜ、
団子状に整形・乾燥した燃料のこと。
冬の季語にもなっている。

炭団坂

踊り場があり、植物が植えられ、
美しく整備された今では明るい印象の階段だ。

坂を上り詰めた右側に坪内逍遙(つぼうちしょうよう)が住んだ家跡があり、
春日通りへ向かう途中には、
真砂中央図書館や文京ふるさと歴史館など区の施設、
諸井恒平(もろいつねへい/秩父セメント創業者)邸などがある。