この日はバレンタインデーだった。
バレンタインデーに思い入れはなくどうでもよいことだったが,立ち寄った高速道路のサービスエリアの土産物店とか街角の店のショウウィンドウに,ハートを抱いた熊のぬいぐるみなどを度々見かけた。
そういう季節感は旅の記憶に色を添える。
チェスキー・クルムロフ。
美しい風景で知られる南ボヘミアの世界遺産の街。
観光シーズンではなかったため,チェスキー・クルムロフ城は歩いて通り抜けるだけだった。唯一見学できるのは壁の外に立てかけられた武器だけ。
しかし,時代を追って増築を繰り返した城の回廊は複雑で,歩くのは楽しかった。
壁の合間からたまに見え隠れするヴルタヴァ川と旧市街の風景は,寒々と,そして神々しい。土産物屋が開いていなくても2月に来て良かったと思わされた。