10ヶ月ほどかかっていた『枕草子』をようやく読み終えた。感想やメモは上巻の分も合わせて下の記事にまとめた。
『枕草子』を読み終えたので,読まずにとってあった『清少納言と申します』も読んだ。丁度完結したところで一気に読めて良かった。面白かったし,『枕草子』その他の歴史や文学のチップをあらゆるところに散りばめられていてそういう箇所を探し出すのは楽しかったが,清少納言を男にする必要性は最後までわからなかった。清少納言と定子を百合にすれば良かったのに??
その他,適当のコミックを摘まみ読み。
4月から宮沢賢治を勉強する予定なので,後半は宮沢賢治にとりかかった。清少納言は「好き!」だが,実は宮沢賢治はそうでもない。それでも天文と地質と農業の知識を併せ持つ宮沢賢治はしっかり読んで解像度を上げておきたいと思う作家だ。現在のところ詩も理解できない難しさに困っているが,今後勉強して好きになれるだろうか? 楽しみだ。
読んだ本の数:18
読んだページ数:1646
ナイス数:43

北村季吟『枕草子春曙抄』を底本とし,著者による現代語訳と評を続けるスタイル。下巻は第一二九段「無徳なる物」から跋文の第三二五段「物暗う成りて」までを収録。終わりに近づくにつれ,あんなにも自由気ままに筆の遊びを謳歌していた清少納言なのに,跋文の冒頭そのままに暗く閉ざされていくようで彼女に何が起こったのかと思いやられ辛かった。上下巻を通し読みするのに十ヶ月かかったし古文には苦労したが,常に次の段を読むのが楽しみだった。何度読んでも発見がありそうで,これからは,ふと思い付いた段を読み返したりしたいと思う。
読了日:02月04日 著者:清少納言

『枕草子』を通読したので三度目。二度目では苺を食べる定子に惚れ惚れする清少納言に『枕草子』を見たが,本当に各所に『枕草子』の記述が散りばめられている。なぎ子の髪が赤毛のくせっ毛であったり,定子がチュウチュウと雀の子を呼んだり,ゲームで男を負かして喜んだり。それとも知らず幼い定子と別れるときの定子の言葉「いあいじのかね」は,『枕草子』屈指の名場面「香炉峰の雪」の元歌,白居易の「遺愛寺の鐘は枕を攲らせて聴き,香炉峰の雪は簾をかかげて看る」に繋がる合い言葉だ。『枕草子』を知れば知るほど楽しめるコミックだと思う。
読了日:02月05日 著者:PEACH-PIT

『枕草子』を通読したのでこちらも初巻から読み直し。2回目。定子と後の一条天皇との顔合わせの場となる香合わせ用の香炉の蓋を道隆邸へ戻しに行く話が中心で,ちょっとぶっとんだ巻。白猫が登場したところで,『枕草子』からは清少納言が好きな猫の話(第三八段「猫は背の限り黒くて異は皆白からむ」)が折り込まれ,女房の打診があったことから清少納言の宮仕えに対する考え方がしっかり反映されていた。 安倍晴明(本物)が見つけた「奇妙な花」は何かの暗示だろう。
読了日:02月06日 著者:PEACH-PIT

白居易「香爐峰の雪」を中心に伊周と定子の教養の深さが描かれる。『枕草子』ではこの兄妹の教養や伊周の貴公子ぶりが何度も繰り返し讃えられているのだ。伊周はこの巻で元服。宮仕えの件で出て行った則光は,旧知の女性を連れ帰る。清少納言が男という設定では則光との間に生まれた息子,橘則長はどうなるのかと心配していたが,こういう解決だったのか。なぎ子と光子の仲は改善され,光子は婚活を始める。藤原北家では花山天皇に退位を迫るための密談。そして望月の君は満月を背に牛車を進め,安倍晴明が時代の変貌を予見する。
読了日:02月06日 著者:PEACH-PIT

望月の姫君大作戦は大成功をおさめすぎ,安倍晴明にたきつけられた花山帝までが現れ,藤原北家の企みも絡まってややこしいことに。放置されている則光の様子はちょっと寂しげだが? 藤原道綱の母が登場し『蜻蛉日記』に道綱のことを書くと張り切っていたが,このエピソードは文学上の事実。なぎ子と兄の清原致信が一緒にいるときに頼光四天王に襲撃されるのも歴史上の出来事。歴史の通りに致信が殺されることはなかったし,こんな修羅場で定子となぎ子が再会するなんてこともなかったわけで,物語はどんどん「もしも」を楽しむ方向に流れていく。
読了日:02月06日 著者:PEACH-PIT

花山天皇の退位騒ぎに切れるなぎ子だが,安倍晴明の力で一件落着。安倍晴明はなぎ子を「風の君」と呼ぶのだった。なぎ子は則光が度々訪れていた馬酔木の君の屋敷を訪れるが,則光に別れを告げられる。『枕草子』では別れを告げるのは清少納言で,それも清少納言が出仕した後,道長派から隠れていた頃なので随分と早い別れだ。その数年後になぎ子は出仕,いきなり御簾を上げる。そこまで「香炉峰の雪」にこだわるか!? 気になるのは光子。竹筒の殿方を再会できるのだろうか。
読了日:02月07日 著者:PEACH-PIT

一条天皇に出会って定子への贈り物を預かるなぎ子。頭中将である藤原斉信とも親しくなり,定子に気に入られ古株女房の風当たりはどんどん酷くなる。一方則光も史実通り宮廷へ入り藤原斉信の元で働くようになる。清少納言と藤原斉信とは親しいながらも最後まで本当に心を許すことはない関係だったと思うが,この物語ではけっこう仲良くなる。定子は一条天皇や伊周を呼んで歌会を開こうとするが,なぎ子は天典侍の策略にはまる。
読了日:02月07日 著者:PEACH-PIT

天典侍に閉じ込められたなぎ子は藤原斉信に助けられ,天典侍は良心の呵責に苦しむ。そんな中,職曹司の幽霊話。中宮定子の案で見回りをすることになり,『枕草子』に出て来る翁丸が登場したり,橘則光と清少納言が宮廷で兄妹と呼ばれていた事実などが物語の中へ回収される。また『枕草子』を世に広めてしまった人物ではないかと言われている源経房が登場。橘家では光子が竹筒の君との再会を果たす。しかし行成より斉信と仲良くなるとは?
読了日:02月08日 著者:PEACH-PIT

清少納言が実家で書いていた日記のようなものが光子によって持ち込まれ,定子によって広められ『枕草子』成立の片鱗が見え始める。一方,藤原道隆が亡くなり中宮定子や伊周に暗雲がさしかかってくる。もともと道長派の藤原斉信は清少納言や天典侍に近づき策略の香りが漂う。創作の中に史実や文学のチップが細かく入れ込まれている。考証や監修を専門に行っている人がいない方がおかしいくらいのレベルだと思う。
読了日:02月08日 著者:PEACH-PIT

伊周の失脚に始まる。関白を決める一条天皇へ母の藤原詮子の介入があったのは史実。清少納言が道長派を疑われ里下がりし,藤原斉信が執拗に橘則光に彼女の居場所を聞き,和布を頬張ってしのいだ話も『枕草子』に書かれている。清原致信と源頼光の確執も史実で疑われていることだ。しかし,最終巻だけあって歴史とは乖離していく。清少納言と仲が良かった藤原行成がほぼ空気なのは,藤原斉信と道長,橘則光を際立たせるためか。『枕草子』成立と関係深いとされる源経房が意外と存在感を示していたのが印象深かった。ラストは何だかあっけないしつまらなくて残念だった。
読了日:02月09日 著者:PEACH-PIT

終末の人がいなくなった世界でハカセという男の子と人工知能生命体の女の子,小日向さんが過ごすラブコメ。終末といっても廃墟は美しいし不便そうでもないし悲壮感は全く感じられず,二人のほのぼの日常を楽しむ感じの物語。著者は漫画家の有田イマリさんと,廃墟背景イラストレーターのぽちさん。
読了日:02月10日 著者:有田イマリ,ぽち

遊園地に行ったり,犬のロボットを拾ったり。犬のロボットの元の飼い主の様子を見る限り随分と長い時間が経っているようだが,はやり街や廃墟が綺麗に残りすぎているのがちょっと気になる。物語は切なく楽しい。この先この世界の謎が少しずつ見えて来るのかも知れない。
読了日:02月10日 著者:有田イマリ,ぽち

ゲームで知り合ったジャジャさん(28)とマッスー君(27)はお互い初めての恋人で恋人とは何をしたらいいのか分からない。うぶ過ぎる二人を中心に周りの人たちは和んだり楽しんだりというほのぼのラブコメ。絵柄も可愛くて良かった。
読了日:02月10日 著者:赤のキノコ

イーハトーヴの木こりの子グスコーブドリの物語。妹のネリと一緒に楽しく暮らしていたブドリだが,冷害が続き深刻な飢饉の中で両親はいなくなる。ネリとも生き別れ,逞しく人生を切り開くブドリ。独特の言葉が印象的だ。
蚕は「てぐす」,田圃は「沼ばたけ」,稲は「オリザ」。てぐすは「天蚕糸」,オリザは「稲」のラテン語だ。
ブドリは最後にはイーハトーヴ火山局で,火山を通じて自然や農業とも関わる仕事をする。細かい描写に宮沢賢治の自然科学に関する造詣深さが垣間見られ,細かい部分にこだわれば物語から様々な情報が引き出せそうだと思う。今の時代の尺度で考えてはいけないけれど,何もブドリに犠牲を強いなくても…と後味が良いとは言えないラストだった。
読了日:02月12日 著者:宮沢 賢治

何を言ってるのか一から十まで理解できなかったとまで言ったら大袈裟すぎるが,そう言いたくなるほど理解不能だった。宮沢賢治は童話を読んでもそれほど心を惹かれないし,私とは感性が合わないのだろうか。ともかくこの詩集は難しすぎて字面を追うだけになってしまい,とても感銘を受けたりできるまで辿り着かなかった。妹が逝ってしまうのがたまらく苦しいということだけはわかった。宮沢賢治が好きな方々は彼の言葉の使い方などを相当勉強し研究したあげくなのだろうか,それとも素で理解できるの? 私には無理!
読了日:02月15日 著者:宮沢 賢治

「二人の錬金術師」「命の代価」「炭鉱の街」「車上の戦い」の4話。「炭鉱の街」と「車上の戦い」はアニメにないストーリーだった。物語の順番は入れ替わっているようだが,アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』はほぼ原作準拠で忠実に作られていたのがよくわかった。
読了日:02月15日 著者:荒川弘

第5話「錬金術師の苦悩」は,綴命の錬金術師タッカーと娘のニーナ,犬のアレキサンダーをめぐる物語。第6話「破壊の右手」は,初めてのスカー戦。エンビーとグラトニーが初登場。第7話「雨の後」はスカーに追い詰められたエドとアルを助けにマスタング大佐一行が現れる。大佐が中尉に「雨の日は無能」と言われる名場面。豪腕の錬金術師アームストロングも初登場。第8話「希望の道」ではヒューズ中佐に見送られ,兄弟はアームストロング護衛のもと故郷へ向かう。途中でドクター・マルコーと出会い賢者の石の手掛かりを得る。
読了日:02月16日 著者:荒川弘

第9話「家族の待つ家」は,ピナコばっちゃんとウェンリーの家に帰りオートメールの整備。第10話「賢者の石」ではセントラルの図書館へ向かう。マリア・ロス少尉とデニー・ブロッシュ軍曹が二人の警護に就く。そして賢者の石の材料が判明する。第11話「二人の守護者」では元第五研究所に侵入。第12話「「人間」の定義」はエドが戦った囚人の物語。外伝「軍部祭り」 はヒューズ中佐やブラッドレイ大総統のお膳立てによるエドとマスタングの勝負。
読了日:02月16日 著者:荒川弘
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