本の記録(2024-05)

 『枕草子』を通読しているため時間が取られ,他の読書はあまりできていない。

 星野富弘さんの訃報を聞き『風の旅』そ再読。
 『枕草子』文化圏展開として,芥川竜之介『侏儒の言葉』と島崎藤村『千曲川のスケッチ』を読んだ。芥川竜之介は『枕草子』など興味無しと本書に書いているが,短文の名手として清少納言と通底しているところがある。独特の感性で世の中を批評した本書は読んでいて痛快で面白かった。
 また清少納言と『枕草子』を愛した島崎藤村の文章は『枕草子』を思わせる活き活きとした短編集で,明治から大正にかけての日本の暮らしや風景が大変興味深かった。また何度か読み返したいと思い,備忘録のブログ記事を書いた。
 →千曲川のスケッチ (2024-05-09)

 『てるみな』新刊が出たのでこれを読んだところで,panpanyaさんの本が恋しくなり読んだりした。


5月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:826
ナイス数:27

風の旅: 四季抄風の旅: 四季抄感想
 星野富弘さんの訃報を受け,ずっと本棚に並んでいたこの本を40年ぶりに開いた。目の前の花への愛情が溢れ出して形になったような詩集だ。
 花の絵と詩が「折れた菜の花」「花に寄せて」「風の跡」の3つのパートに分けられて並び,その間に短い随筆というのが本書の構成。手足を使えない星野さんが筆を口にくわえて描いた絵と詩が並ぶ。自分で動かせるのは頭だけという星野さんの観察眼は,花々の小さな変化を見過ごさず,その背後にある生命の美しさや悲哀,花にも人間にも共通する自然の営みを優しく捉え,文字になっているようだと思う。
読了日:05月01日 著者:星野 富弘

侏儒の言葉侏儒の言葉感想
 短編随筆集で大正12(1923)年〜昭和2(1927)年にかけて書かれた短編随筆集で,文藝春秋社の雑誌に連載された。「侏儒」とは体の小さい人や知識のない人への蔑称とのことだ。シニカルかつ人間味溢れる独特な感性で綴った短編集。『枕草子』『徒然草』に並ぶ短編集と聞いて読んでみたが,芥川竜之介ご本人は「「つれづれ草」などは未嘗愛読したことはない。」とのことだ。
読了日:05月02日 著者:芥川 竜之介
千曲川のスケッチ千曲川のスケッチ感想
 新しい渇望を感じた藤村が小諸で教師をしながら,事物を正しく見ることを学ぼういう心の欲求に従って書き付けた散文集。書きためたものの中から,年若い人達の読み物に適していそうなもののみを選び,明治の末から大正の初めにかけて博文館の雑誌『中学世界』に毎月連載された。
 明治の終わり頃の小諸を中心とした信州の人々の生活風景や彼等が見ていた自然の風景が,そのまま頭の中に浮かび上がってくるような小作品群は,まさに「スケッチ」の名にふさわしいものだ。
読了日:05月07日 著者:島崎 藤村

てるみな 5 (楽園コミックス)てるみな 5 (楽園コミックス)感想
 表紙から分かるがミナちゃんが随分成長した。成長するんだ!連載開始当初は小学校低学年って雰囲気だったのが,現在は高学年か中学生? 内容の荒唐無稽さは相変わらずで,第1話の足湯の物語からぶっとばしている感じ。八百万の神々とか,恐ろしい相互乗入れとか,不思議な時刻表とか,幻の未成線の線路とか,川と鉄道の関係とか,忘れられた参詣線とか,因習村とか,歯の上の線路とか…。
読了日:05月07日 著者:kashmir

足摺り水族館足摺り水族館感想
 1年半ぶりくらいの再読。再読なのでゆっくりじっくり味わいながら絵を眺めたが,1コマ1コマ,その中の小さな線まで見逃してはもったいない気持ちにさせられる本だ。帯に「見捨てられたもの/忘れられたもの/新しすぎたもの」と書かれているがそれらへの愛情が溢れている。一貫して登場する主人公の淡々とした行動と表情の中の細やかな感情の動きが心地よい。魚と呼ぶには魚ではない魚類の亜類みたいな魚,鳥類の亜類みたいな鳥の存在が特徴的。魚や鳥に異世界感を発見した気がする。
読了日:05月14日 著者:panpanya

模型の町 (楽園コミックス)模型の町 (楽園コミックス)感想
 panpanyaさんの世界に浸りたくなって1年半ぶりに再読。 レオナルドとの「ここはどこでしょうの旅」シリーズや「模型の町」シリーズの他には,ブロック塀の透かしブロック(壁穴),学校の引っ越し,夜の停電の話,3ページくらいのいくつかの短い話,漫画の間の1ページくらいの随筆。随筆は字が小さすぎて老眼には辛いが,頷きたくなる生活の中の雑感なので感じ入ることが多く頑張って読んだ。
読了日:05月18日 著者:panpanya


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