「日本の鉄道の父」井上勝を中心に描いた明治鉄道はじめ物語
- 陸蒸気はじめました。【増補版】(全2巻)
- 著者:相生リサコ
- 媒体:電子書籍・オフセット印刷など
陸蒸気はじめました。【増補版】
鉄道の父,井上勝(1843~1910)。
長州ファイブ(長州五傑)の一人として,井上勝は伊藤博文らと共に鎖国中だった江戸時代にイギリスへ密航留学。帰国後,紆余屈折を経てイギリス人のエドモンド・モレル(1840~1871)と共に新橋から横浜まで,日本の最初の鉄道の礎を築いた。
鉄道の父として知られる井上勝だが,視察に訪れた岩手県で牧場を開くことを思い付き,小岩井牧場の創始者にもなっている。
現代風にギャグ満載の軽いノリで描かれていながら,押さえるべき史実はしっかりと押さえてある。鉄道マニアでもなく予備知識もなかったが,面白く読むことができた。
とりあえず,東京駅の井上勝像と,桜木町駅のモレルの碑・鉄道発祥記念碑を見に行きたいものだ。
続・陸蒸気はじめました。【増補版】
続刊は,東京―横浜が開業したあとの物語。
鉄道事業は,関西や東海道,東北や中山道など日本各地へ広がっていく。井上勝は相変わらずのポジティブパワーで事業を切り開き,スパルタで技術者達を育てあげる。しかし,鉄道長官を辞任し政府を去った後も,何故か部下達には慕われて個人的なつきあいが続いた。
そして最後まで鉄道との縁のもと,鉄道視察に行った懐かしのロンドンで持病が悪化し客死したのだった。66歳の若さだった。
亡くなって4年後には東京駅に勝像が建てられ,怒りっぽくて頑固者だったが,多くの人に慕われ尊敬されていたことが窺える。
著者は後書きで,「史実をもとにしたフィクションとしてお読み下さい」と書いている。
そのように読んだつもりだが,今まで知る機会が無く知ろうともしなかった鉄道の歴史のこと,この本以外では語られてもいないであろうマイナーな人物達の仕事について分かって良かった。