あゝ我らがミャオ将軍

社会主義国家を導く9歳の少女の物語

  • 出版 コアミックス ゼノンコミックス
  • 著者 原作:まつだこうた 作画:もりちか
  • 初出 WEBコミックぜにょん(2018年~2020年)
  • 全4巻(完結)

 舞台は架空の国コルドナ社会主義共和国。
 建国の革命家ホー・チョビロフの息子,ジョー・チョビロフは強靱な姿勢で世界を震撼させていた。しかし急逝してしまい,世襲制によりジョーの娘,9歳の少女であるミャオが将軍として就任した。

 しかし,国の頂点に立つ指導者とはいえミャオは9歳の少女だ。
 政治のことはよくわからない。怖いのは嫌いだし,楽しいことや可愛いものが好き。
 他の国から嫌われたくないし,国民みんなが幸せだといいなと思っている。

 ミャオなりに一生懸命国民のことを考え,子どもっぽい計画を実行していく。
 コルドナのスポーツを考えたり,若者も老人も楽しめるカフェを考えたり。そう,ミャオ将軍はけっこう多才なのだ。
 また,亡命者を気にしたり,外国の首脳と会談したり,彼女なりに政治のことも真剣に考えている。
 みんなに愛されるミャオ将軍のもと,コルドナは素敵な国に変わっていく??

 側近のカン党書記とグェンが良い味を出しているし,風刺が効いていて面白いし,何しろミャオは大変可愛らしい。ミャオが成長していく姿も微笑ましい。
 色々突っ込まずに素直にミャオ将軍の可愛らしさと偉大さを愛でて和むのが良い物語だと思う。

 大切なことなのでもう一度書いておこう。何しろミャオ将軍は大変可愛らしいのだ。
 あぁ我らがミャオ将軍!


登場人物

  • ミャオ・チョビロフ(ミャオ将軍)
     世襲制により9歳にしてコルドナの最高指導者となった少女。幼いが優しくて思いやりがあり,国のことも一生懸命考えている。記念日は6月7日ミャオ同志粛清記念日。
     
  • ホー・チョビロフ
     ミャオの祖父。建国の革命家。記念日は8月14日革命の日。
     
  • ジョー・チョビロフ
     ミャオの父。徹底した先軍思想でコルドナを世界から孤立させた。急逝し,娘のミャオが後を継ぐ。記念日は12月3日新時代記念日。
     
  • カン党書記
     ミャオの側近で眼鏡がトレードマーク。ミャオから度々粛清されるのが半分仕事? 毎朝野菜ジュースとヨーグルトを飲んでいる。ストイックな性格でミャオの父ジョー将軍の頃から国のために頑張ってきた。だが世襲制には反対だった。カンの父親はホー将軍の参謀。掃除に園芸に料理なんでもこなす多才。
     
  • グェン
     ミャオの側近。グェンの父親はホー時代の軍師だった。
     
  • トーニャ・ファン
     カン党書記の孫娘でミャオと同年。おじいさま想い。ミャオとも仲良し。真面目でストイックなカンの孫らしく眼鏡&三つ編み。
     
  • アデリーナ
     グェンの娘。コルドナを海外のようなキラキラで楽しいイケてる国にしたい,新しいモノ大好きギャル。グェンにはミャオ将軍をそそのかすなと言われ対立している。頭に花を飾っている。
     
  • ミハエル
     友好国の政治家。猫を飼っている。
     
  • ミャネーシャ
     ミャオの母親。
     
  • スアン・イニシエフ
     女性政治将校。ミャオの教育係に抜擢される。多くの反乱分子を情け容赦なく粛清し,先代のジョー将軍から革命功労勲章を与えられた。「コルドナの鋼鉄の魔女」の異名を持つ。
     
  • ドミニク・トムソン
     コルドナの資源を自国の発展のために利用したいと考えている資本主義国家?の大統領。


陸蒸気はじめました。【増補版】

「日本の鉄道の父」井上勝を中心に描いた明治鉄道はじめ物語

  • 陸蒸気はじめました。【増補版】(全2巻)
  • 著者:相生リサコ
  • 媒体:電子書籍・オフセット印刷など

陸蒸気はじめました。【増補版】

 鉄道の父,井上勝(1843~1910)。
 長州ファイブ(長州五傑)の一人として,井上勝は伊藤博文らと共に鎖国中だった江戸時代にイギリスへ密航留学。帰国後,紆余屈折を経てイギリス人のエドモンド・モレル(1840~1871)と共に新橋から横浜まで,日本の最初の鉄道の礎を築いた。

 鉄道の父として知られる井上勝だが,視察に訪れた岩手県で牧場を開くことを思い付き,小岩井牧場の創始者にもなっている。

小岩井農場の歴史|創業者の思い

 現代風にギャグ満載の軽いノリで描かれていながら,押さえるべき史実はしっかりと押さえてある。鉄道マニアでもなく予備知識もなかったが,面白く読むことができた。

 とりあえず,東京駅の井上勝像と,桜木町駅のモレルの碑・鉄道発祥記念碑を見に行きたいものだ。


続・陸蒸気はじめました。【増補版】

 続刊は,東京―横浜が開業したあとの物語。

 鉄道事業は,関西や東海道,東北や中山道など日本各地へ広がっていく。井上勝は相変わらずのポジティブパワーで事業を切り開き,スパルタで技術者達を育てあげる。しかし,鉄道長官を辞任し政府を去った後も,何故か部下達には慕われて個人的なつきあいが続いた。
 そして最後まで鉄道との縁のもと,鉄道視察に行った懐かしのロンドンで持病が悪化し客死したのだった。66歳の若さだった。
 亡くなって4年後には東京駅に勝像が建てられ,怒りっぽくて頑固者だったが,多くの人に慕われ尊敬されていたことが窺える。

 著者は後書きで,「史実をもとにしたフィクションとしてお読み下さい」と書いている。
 そのように読んだつもりだが,今まで知る機会が無く知ろうともしなかった鉄道の歴史のこと,この本以外では語られてもいないであろうマイナーな人物達の仕事について分かって良かった。