『地球の放課後』は、『チャンピオンRED』(秋田書店)にて 2009年9月号~2012年7月号に連載されたSFコミック。
いわゆる「終末もの」で、単行本は全6巻で完結済み。
長すぎず短すぎず、ゆるゆる日常系って感じで楽しく読めます。
「SF」と言っても、従来の「SF=サイエンス・フィクション(空想科学小説)」より、藤子・F・不二雄氏によって定義されたファンタジー的「すこし ふしぎ=SF」に相当する作品が多そうな昨今ですが、『地球の放課後』はサイエンス・フィクションに分類できる、しっかりしたSF作品ではないかと思います。
「しっかりしたSF」と言っても、別に内容が固くて難しいわけではないところが凄い。
登場人物は小学生から高校生までの男女4人。4人は終末の世界を「放課後のようだ」と例え、ポジティブに楽しく生きている。
本当に放課後のクラブ活動をしているみたい!
登場人物の4人を簡単に紹介しておきましょう。
- 川村正史:17歳。杉並区在住で、正史の家にみんなが住んでいる。 理科系全般にわたって大変な知識と能力を持っていて、ほぼみんなの生命線になっている。性格も柔和で温和。そして前向き。清美という妹がいる。
- 八重子:17歳。多摩区出身。で大きな家のお嬢様だが、性格は少しもお嬢様っぽくない。数学が得意で貧乳が悩み?
- 早苗:16歳。千葉県出身。眼鏡のボブっ娘で巨乳。キャンプで杏南と知り合い、その後正史と出会う。
- 杏南(あんな):浅草出身の小学生。物語の中で11歳を迎える。お転婆で明るい性格。突拍子も無い行動で度々みんなを翻弄する。浅草の家では「ぼんきち」という名の猫を飼っていた。
謎の現象“ファントム”により、人類が消えた世界に残された4人の少年少女。再会を信じ、力を合わせて生きていくが…!?
(1巻 Amazon内容紹介より)
1巻の前半では、荒廃していく街の中で4人の日常生活がゆるーく繰り広げられ、4人の性格や生活ぶりが紹介されます。後半には謎解きに関係しそうな伏線が幾つか。
人類が消えた地球で生きてゆく正史たち4人の少年少女。彼らに訪れる出会いと別れ。その先に見える光とは…!?
2巻 Amazon内容紹介より)
2巻ではみんなの家があった場所のことや、八重子ちゃんの学校時代の回想シーンが印象的。実は八重子ちゃんは勉強のできる子。数学が得意!
消滅しちゃうファントムのことを、杏南ちゃんは「具合の悪いファントム」と呼ぶ。実はアホでノーテンキな杏南ちゃん、優れた洞察力の持ち主なのかもしれない?
消えてしまった正史の妹の清美ちゃん、ファントムの中の星空、時間跳躍など、謎解きの鍵なのだろうかどうなのだろうかという巻。
巻末の「初期スケッチ集」が素敵!
4人以外の人影が!? その正体は!? 正史たちの静かな生活に、謎の影が忍びよる…!?
3巻 Amazon内容紹介より
映画づくりをしてみたり、杏南の誕生日を祝ったり、楽しむことを忘れない4人。
雨が降って思い出した「コティヤール予想第7段階」のこと。
「ファントム(phantom)=幽霊・幻影・幻」という名前の意味のこと。
正史が「みんな生きている、帰ってくる」と思っている理由。
少しずつ少しずつ謎に迫っていく感じがする巻。
正史が時間を跳躍して、ファントムが現れたあの日、あの場所へ……!?正史はあの娘を救えるのか!?
4巻 Amazon内容紹介より
物語の「現在」が2036年7月だと分かる。
正史はいつも服を着ているのに、女の子たちは常に水着なのが何か謎というか、ちょっとあざといというか。そもそも7月の太陽で日焼けが大変では!?
まぁそんなことはともかく、自衛隊キャンプで見つけたビデオからヒントを探す正史。
流れ星の夜の早苗と正史。たまに起こる時間跳躍。杏南と清美の作戦などなど。
ぼんきちとファントムには何か関係があるの? 前の巻から引き続き星空が何かの鍵になっているように思えるがまだわからない。
確信に近づいている手応えを感じる巻。
で,杏南ちゃんは絵がとても上手。正史はとても下手なのだった。
ビデオの中の山本士長の言葉と早苗ちゃんの言葉を引用しておこう。
山本士長の言葉は「終末」ではなくとも真理だし、
早苗ちゃんの言葉は胸に刻んでおきたい。
「もしあなたに守るべき人がいたら…全力で守ってほしい あなたが守っていると思っている人からも あなたは守られているのだから…」
地球の放課後 4巻(山本士長)
「考え事ばかりしてると早く歳をとるんだよ 大人になると時間が過ぎるのが早く感じるって言うけど…それはいつも考え事ばかりしてるからなんだよ」
地球の放課後 4巻(早苗)
残された4人の共通点に気付いた正史。彼らは選ばれし存在なのか? 誰が、なぜ、何の目的で…!?
5巻 Amazon内容紹介より
動物とファントムの関係を探ろうと思う正史。アップルとファントムにもどんな関係があるのだろうか。
1巻からずっとそうだが、とにかく正史が有能すぎる。終末には一家に一人、正史!
終末生活も2年になり、なるほど2年も学校へ行ってなかったら学力も落ちるであろうと思い至るみんな。
さて、フェルマーの定理 n=4を証明しようということで、4人の共通点に気がつく正史なのだった。
ついに、すべての謎が明らかに…!?滅亡迫る地球に独り残された正史。彼の決断が、地球の未来を決める!?日常系終末ストーリー、ついに完結!
6巻 Amazon内容紹介より
各キャンプに同時に現れていた老人の正体は?
そして、とうとうその日がやってくる。星が増えていく。
みんなファントムの向こう側へ行かなければならないのか?
ガンマ線バーストにオールト雲…。
疑問点はキッチリ説明され、スッキリ爽やかな気分になれるラストだった。
2歳歳をとった清美の年齢も、アップルの存在も、理由があった。
後書きでは初恋の彼女やキャンプの男の眼帯の理由、未来の4人の年齢差についても理由が明かされる。
アブラゼミがミーンミーンって鳴いているのは、たぶん杏南ちゃんがアホだからね?
人間の視覚は光に頼っている
地球の放課後 6巻 P.88
よって”事象の地平”に似た現象が起きる
”シュバルツシルト面”だね!
実際に起きている事と見えているものは違う
『地球の放課後』
SFが好きな方、終末ものが好きな方、日常系が好きな方にもにお勧めなコミックではないかと。
読後、登場人物たちとのお別れが寂しかったのでした。
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