炭団坂(たどんざか)―文京区

台地と低地が入り交じる東京の都心部は、
美しい坂道や階段の宝庫。
散歩しながら見かけた階段や坂道の記憶を残しておこうと思う。

炭団坂

文京区本郷4丁目の炭団坂(たどんざか)。
北北西から南南東へ下る、
あるいは北北西から南南東へ上る。
文京区の公式サイトによると、長さ約35m。

炭団坂

本郷台地と菊坂の谷を結ぶ急な坂道で、
「炭団坂」の名前の由来は、
「このあたりに炭団を商売にする者が多かった」
「急な坂で転び落ちた者がいた」
など。

炭団坂

谷底の菊坂方面には古い街並みがあり、
坂を上りきった道を真っ直ぐ歩くと春日通りだ。

台地の北斜面に位置する坂でジメジメしていたため、
今のように美しく整備される以前は、
雨上がりなどに本当に転げ落ちた人もあったであろうと
炭団坂の説明板に書かれていた。

「炭団(たどん)」なんて現代の生活にはほぼ無縁なもので、
若い方は聞いたこともなかったりするのではないだろうか。
炭(木炭・竹炭・石炭など)の粉末を、
フノリ(布海苔/フノリ科の海藻)などの結着剤と混ぜ、
団子状に整形・乾燥した燃料のこと。
冬の季語にもなっている。

炭団坂

踊り場があり、植物が植えられ、
美しく整備された今では明るい印象の階段だ。

坂を上り詰めた右側に坪内逍遙(つぼうちしょうよう)が住んだ家跡があり、
春日通りへ向かう途中には、
真砂中央図書館や文京ふるさと歴史館など区の施設、
諸井恒平(もろいつねへい/秩父セメント創業者)邸などがある。

本郷給水所公苑

東京都水道歴史館を出ると、
エントランス横にこんな案内板を見つけた。
せっかくなので、こちらも見学しておこう。

本郷給水所公苑への案内板

水道歴史館からの通路を上ると、まず神田上水石樋があった。
午後遅い太陽が眩しく照らしていて、
写真を撮るのも説明文を読むのも難しかったのだが、こんな感じ。

移築保存されている神田上水石樋

本郷給水所公苑は、
1892年(明治25年)に建設された本郷給水場の上に人工地盤を造成し、
その上に作られた公苑。
水道歴史館の野外展示場として神田上水が復原展示されている。

苑内は洋風庭園と和風庭園の2部構成。
洋風庭園はフランス式デザインで、パーゴラや地球儀、
時計などが配備されたバラ園。
和風庭園は武蔵野散策のイメージで作られた
池や四阿(あずまや)、雑木林や沼などが配されている。

本郷給水所公苑のバラ園

2月だったので残念ながら冬枯れだが、
バラの季節はかなり美しい風景が見られることだろう。

本郷給水所公苑の地球儀

和風庭園部分の池。
池の周りには鳥の彫像を拝したベンチが置かれていた。

本郷給水所公苑の池
本郷給水所公苑のベンチの鳩の彫像

この神田上水石樋(せきひ/石垣樋)は、
昭和62年~平成元年にかけて発掘された
神田上水幹線水路の一部を移築復原したもの。

神田上水石樋

神田上水は、井の頭池の湧水を水源とする神田川、
神田川支流の善福寺川(ぜんぷくじがわ)、
妙正寺川(みょうしょうじがわ)からの水を合わせ、
目白台下の大洗堰(おおあらいのせき)を通り、水戸藩邸を通り、
神田川の上を懸樋(水道橋の名前の由来の橋)で渡し、
神田・日本橋方面へ水を届けた。

神田上水石樋

東京の歴史に想いを馳せつつ、ゆっくり楽しめる美しい公園だと思う。
バラの季節に行ってみたいものだ。