バレンタインデーに歩いた街

 この日はバレンタインデーだった。
 バレンタインデーに思い入れはなくどうでもよいことだったが,立ち寄った高速道路のサービスエリアの土産物店とか街角の店のショウウィンドウに,ハートを抱いた熊のぬいぐるみなどを度々見かけた。
 そういう季節感は旅の記憶に色を添える。

ヴルタヴァ川と旧市街@チェスキー クルムロフ(2003-02-14)
ヴルタヴァ川と旧市街@チェスキー クルムロフ(2003-02-14)

 チェスキー・クルムロフ。
 美しい風景で知られる南ボヘミアの世界遺産の街。

 観光シーズンではなかったため,チェスキー・クルムロフ城は歩いて通り抜けるだけだった。唯一見学できるのは壁の外に立てかけられた武器だけ。
 しかし,時代を追って増築を繰り返した城の回廊は複雑で,歩くのは楽しかった。

 壁の合間からたまに見え隠れするヴルタヴァ川と旧市街の風景は,寒々と,そして神々しい。土産物屋が開いていなくても2月に来て良かったと思わされた。

プラハのマリオネット

 プラハの春とビロード革命の舞台になったヴァーツラフ広場から1ブロックほど歩き,ハベル教会の前に広がるハベル広場にやってきた。
 やたら露店が並んで賑わっている。

 雪が降りしきる中,露店を1件1件のぞいて歩く。
 木製の玩具にビーズ細工,ボヘミアングラスの製品やマグネット,革細工や絵などなど,如何にも土産物という感じの安価な民芸品が並び,観光客を待っている。

ハベル広場の露店(2003-02-15)
ハベル広場の露店(2003-02-15)

 ここで気になったのがオウムのマリオネット。

 だが買う決心をしている時間がなかった。
 次の正時に,市庁舎の天文時計のからくりを見に行かねばならなかったのだ。
 夕闇が迫り,この機会を逃すと天文時計のからくりを見ないままプラハを去ることになる。

 タイムリミットで慌てて立ち去ったが,やはりどうしてもこの赤毛のオウムを諦められず,ホテルへ帰る間際,まだ店が開いていますようにと願いながら,もう一度訪れた。
 そうして無事に買って帰ったのだった。

 オウムは今も部屋の天井からぶら下がっている。