夕暮れの団子坂

 千代田線千駄木駅から南北線本駒込駅へ,西へ向かって上って行く団子坂。
 藍染川が流れる坂下と本郷台地を結ぶ坂道だ。

 夕暮れ時に坂を上ると正面の空が夕焼けで染まり美しい。季節によっては低い太陽を目指して坂を上ることになり,これもまた絵になる。

 今の季節は日没が早いので16時を過ぎると既に暗く,寒々とした空に微かに残った夕焼けの名残に心惹かれた。

団子坂(2023-12-20 16:16)
団子坂(2023-12-20 16:16)

 団子坂の途中には森鴎外が30年暮らした観潮楼跡(森鴎外記念館)があり,この坂道は森鴎外の『青年』や夏目漱石の『三四郎』にも登場する。
 これらの小説に描かれた明治時代,団子坂では秋になると菊人形が並んでいたそうだ。今ではその片鱗を窺うこともできないが,団子坂の菊人形はかなり有名な名所だったらしい。

団子坂(2023-12-20 16:19)
大観音通りの街灯(2023-12-20 16:19)

 既に街灯に灯が点っている。
 街灯というものは通りによって趣向が凝らされており,その道の顔であると常々思う。
 道沿いに駒込大観音(光源寺)があるためこの道は「大観音通り」と呼ばれているが,街灯の横に「大観音通り商栄会」の幟がはためいている。昔ながらの個人商店が並ぶ商店街だ。
 この街灯は長い間この商店街を盛り立ててきたのだろうなどと思いながら街灯を見上げた。

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履き物屋さん

 冬の晴れた日,田端付近をあてもなく散歩していた。
 たまたま通りかかった田端高台通り。まっすぐ行けばJR山手線田端駅南口に辿り着く。

 昔ながらの商店街なのだろう。
 蕎麦屋に寿司屋,鮮魚店にカラオケ店,美容院に理容室など,昭和の時代から掛け替えていないような年代物の看板を掲げた個人商店が連なっている。

 中でも目に付いたのが雪駄をつるした履き物屋さん。
 看板もなくて店の名前もわからない。

下駄屋(2023-01-21)
ファッションサンダルのふじや(2023-01-21)

 雪駄に下駄,つっかけサンダル。
 昔懐かしなのは商品だけではない。木枠のガラスの引き戸は昭和の時代の商店街でよく見かけたものだ。

 50〜60年前の商店街には必ずこんな履き物屋さんがあった。私が育った町の商店街にもそっくりな下駄屋さんがあった。隣には金物屋さん,その隣には銭湯。
 とっくの昔に消え去った懐かしい時代を思い出させる風景だった。

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