千代田線千駄木駅から南北線本駒込駅へ,西へ向かって上って行く団子坂。
藍染川が流れる坂下と本郷台地を結ぶ坂道だ。
夕暮れ時に坂を上ると正面の空が夕焼けで染まり美しい。季節によっては低い太陽を目指して坂を上ることになり,これもまた絵になる。
今の季節は日没が早いので16時を過ぎると既に暗く,寒々とした空に微かに残った夕焼けの名残に心惹かれた。
団子坂の途中には森鴎外が30年暮らした観潮楼跡(森鴎外記念館)があり,この坂道は森鴎外の『青年』や夏目漱石の『三四郎』にも登場する。
これらの小説に描かれた明治時代,団子坂では秋になると菊人形が並んでいたそうだ。今ではその片鱗を窺うこともできないが,団子坂の菊人形はかなり有名な名所だったらしい。
既に街灯に灯が点っている。
街灯というものは通りによって趣向が凝らされており,その道の顔であると常々思う。
道沿いに駒込大観音(光源寺)があるためこの道は「大観音通り」と呼ばれているが,街灯の横に「大観音通り商栄会」の幟がはためいている。昔ながらの個人商店が並ぶ商店街だ。
この街灯は長い間この商店街を盛り立ててきたのだろうなどと思いながら街灯を見上げた。