今、会いにゆきます

概要

  • 小説著者:市川拓司(2003年/小学館)
  • 映画公開:2004年10月30日(監督:土井裕泰/主演:竹内結子・中村獅童)
  • DVD発売:‏2005年6月24日(1時間58分)

市川拓司の原作小説を竹内結子と中村獅童共演で映画化した純愛ドラマ。妻に先立たれ息子と暮らす巧の前に、1年前に亡くなったはずの妻・澪が現われる。だが、記憶を失っていた澪との幸せな共同生活は雨の季節が過ぎ去ると共に終わりを告げる。

「キネマ旬報社」データベースより

 恋愛×ファンタジーの小説をベースに映画化された作品で,テレビドラマやコミックにメディア展開されている。主題歌の ORANGE RANGE 《花》は,オリコン初登場で1位,通算4週1位を獲得するヒットになった。

 涙なくして見られない,そして最後には,大切な人との限りある時間の大切さを思い知ることになるだろう。


感想など

 毎年6月に一人で見ることにしている。
 最初は単にやたらと友人に勧められDVDを贈られたので見たのだった。

 まず作中の風景が素敵だ。池の畔の畦道や森の中の廃工場,温かみがある可愛らしい診療所や,地方都市商店街の街並み等々。また作品中の1990年代,1980年代の時代背景がよく描かれている。その時代を知っている私にもすんなり入り込める細やかさだ。

時代背景

 映画の冒頭場面を2004年とすると,その時
  巧=41歳,佑司=18歳

 佑司の回想場面の雨の季節は,2004-12=1992年で,
  巧=29歳,佑司=6歳,澪=20歳

 すると,澪が20歳だった9年前は1992-9=1983年。
 従って,澪と巧は1963年生まれ。高校卒業は1982年春だ。

 1~2年のずれはあると思うが,だいたいこんな時代になると思う。

 高校時代の澪の眼鏡や帽子は,1980年前後によく見られたものだ。
 大学生になった澪が,巧から電話をもらった日に自室で着ていたセーターも当時よく見られたデザイン。

 また,大学時代の澪や巧が使った公衆電話は1980年代前半のもの。丁度、100円玉が使える黄色い公衆電話と,テレフォンカードが使える緑の公衆電話が混在する時代だった。

 タイムスリップして未来の1992年に現れた澪が着ていた白いワンピースのベルトのバックル,自分の時代(1983年)に戻った澪が履いているサンダルや街角の人々の服装。これらも1980年代前半のものだ。

 巧が東京へ向かう高速バスの中で煙草を吸っている男性がいるが,喫煙が当然だった当時では至って普通の風景だった。

 ほぼ同じ時代に高校と大学を過ごした私には,風景から服装まで懐かしすぎる風景だ。おかげで,自分の過去を振り返り現在を想うには最適な映画になってしまった。

ハンドメイドが溢れる家

 澪と巧の住む平屋建ての家が,とても懐かしく温かみがある雰囲気だ。

 緑に囲まれ,古びた硝子窓に優しいカーテンがかかり,手作りキルトのクロスがかけられたテーブルの上には,ステンドグラス風のペンダントライト。
 壁に飾られた写真フレームにも,キッチンの湯沸かし器にもオリジナルの絵が描かれ,縁側の前の庭にはヒマワリが揺れる。

 高校生の頃から絵を描くのが好きだった澪は,オリジナリティ溢れる独特の世界で家の中を作り上げている。
 澪はいなくなっても,家の中には常に彼女の面影が溢れかえっているのだ。
 大切な人との限りある時間を,彼女が愛し尽くしたことが感じられる。

私の幸せはあなたなのよ。

今、会いにゆきます


 そう言い切る澪。
 自分の周囲にいてくれる人たちに対するそういう気持ちを忘れずに,来年の6月までまた生きてゆこうと毎年この映画を見て思う。

突っ込みたくなる色々(ネタバレです!)

 毎年見ている私だが,この映画,けっこうツッコミ所が満載だと思う。
 正直言って「それどうなのよ!?」と思う場面も多々。
 既に15回以上見ていて毎回気持ちが引っかかってしまうので,自分の精神衛生のために幾つか突っ込んでおこうと思う。


 冒頭のケーキ屋さん。
 今日で店を閉めるからって,何故そんな朝早くから配達するかな? 意味分からない。挨拶回り? 当日にしないよね。


 澪が,巧の同僚である永瀬さんに会う場面。
 兎にも角にも,澪の言動が酷すぎる。

 彼女らは,澪の生前,特に親しかったわけではなさそう。しかも澪は死んでいる。
 なのに澪は永瀬さんを呼び出し,いきなり「とにかく私のお願い聞いてくれますか。お願い。お願いします。」と,深刻そうに頭を下げる。これだけでも永瀬さんからすれば意味不明だし,なにより凄い恐怖だろう。
 恐怖と動揺で「わかりました」と言う以外に選択肢がないではないか?

 しかもお願いの内容が酷すぎる。
 「巧と佑司のことお願いできませんか。」
 巧に好意を寄せる彼女に後を託すのかと思いきや,いったそばから「巧が他の誰かを愛するなんて嫌,ごめんなさい,忘れて下さい」??
 自分が消えた後の彼女の行動を縛り牽制するために,わざわざ呼び出したのですか。

 あぁ永瀬さん,幸せになって下さい。

 これだけでも酷いのに,この後さらに,気持ちを取り直して健気に「お久しぶりです」と切り出す永瀬さんに,澪はこう言うのだ。「私あなたのこと実は覚えてない」と!?
 覚えてないのに呼び出して,そんな嫌がらせのようなお願いを切り出した上,取り消したのですか,君は。人格疑う…。


 この次の場面のケーキ屋さんでの澪も,まじ酷すぎる。

 佑司のためにケーキを予約するのは素敵な思いつきだ。
 だが,特に親しいわけでもないケーキ屋さんのご主人に「この店つぶれたりする予定ありませんか?大丈夫ですか?」なんて質問するか?! あきれ果てる…。
 幾ら彼女なりの苦しい事情があったとしても,その言い草はないだろう。他に幾らでも言い方はあるはずなのに。


 更に場面は進み,7月,梅雨明けの小学校の教室。
 明るくなった空を見た佑司が,授業中に突然先生に言った言葉。

 「僕どうしても帰らないといけないんだ」

 いやいや,その言葉遣いはダメでしょう。そもそも授業中にいきなりそんな発言をするのはマナー違反なのだから,せめてきちんと敬語を使いなさい。



 ほんの一例だが,こんな感じで,この映画が大好きで毎年見ているけれど,何もかも気に入っているわけでもないのだった。
 竹内さんの演技も話し方がどうも馴染めないのだが,彼女の笑顔が最高に可愛らしいので気にしないことにして見ている。

(昨年の竹内さんのご逝去は本当にとてもとてもとても残念だ。熊本地震を心にかけて下さってありがとうございました。ご冥福をお祈り申し上げます。)

アニメ覚え書き(2021年01月~03月)

旧作も含めこの期間に見終わったアニメの備忘録。

ひぐらしのなく頃に業

 2020年秋から2クール。伝説の名作の新たなアニメ化で最後の謎解きまで終わるのだろうと期待して見たのだが,沙都子の物語だった。何だか中途半端なよく分からない状態で終わってしまった。続きは? 作品が複雑で難しくて一度さらっと見たくらいでは理解が足りなすぎたのかも知れない。


イエスタデイをうたって

 漫画原作,2020年春アニメ。Netflixにて視聴。
 舞台は2000年代の世田谷区あたりらしく,コンビニはあるが家にはまだプッシュフォンや黒電話やブラウン管テレビが存在する。主人公の住むアパートにある炬燵やファンシーケースは昔の大学生の下宿の部屋のようだし,エンディング画面にはゼビウスに似たゲーム画面が出てきたりしてノスタルジックな雰囲気。登場人物たちの生き方を描いた真面目な作品だった。  ただ,ハルちゃんや浪くんみたいなぐいぐい来るキャラクターは苦手だし,リクオや榀子みたいなうじうじハッキリしないキャラクターも苦手なもので,メインキャラ4人を誰も好きになれず,そのため共感もできずに終わった。


進撃の巨人 第4期 Part.1

 大人になったエレンが兄のジークと交流を持つようになり,壁の外の世界のことが描かれるようになり,巨人との戦いというより,巨人という存在に対する価値観の戦いになっていく。主要人物の死や,揺るぎないと思われたエレンとミカサとアルミンの間での断絶など,相変わらず暗く重い物語が続く。
 原作も最終回を迎え,次シーズンが楽しみだ。


裏世界ピクニック

 ハヤカワ文庫のミステリーが原作。原作は読了していたので楽しみに見たのだが,原作ほど怖くなくて残念だった。視覚化された裏世界を見られたのは良かったと思う。小桜の日高里菜さんがすごくイメージ通りだった。


ホリミヤ

 原作は『堀さんと宮村くん』というWebコミック。何故アニメの表題はホリミヤにしたのだろう。2021年冬アニメ。Netflixにて視聴。
 高校3年生を描いた学園恋愛もので,安心して楽しめるアニメ。それにしても高校生のうちからみんなでもっと遊びに行けば良かったとか,卒業してもみんな友達でいつでも会えそうなところとか,関東だよねと思う。都会から遠く離れた進学校なら,卒業後はみんな日本各地にバラバラで滅多に会えなくなるし,超絶車社会なので高校生の時にみんなで遊びに行く場所とかないですよ。


アオハライド

 原作は『別冊マーガレット』の漫画(2011~2015)。2014年夏アニメ。
 何かラブコメが見たくて適当にNetflixにて視聴。女の子3人に男の子2人で同じ人を好きになったり,男の子のお母さんが亡くなってたり,『星の瞳のシルエット』を彷彿とさせた。まぁ普通に面白く見たけれど,今ひとつ入り込めなかった。私は『星の瞳のシルエット』の方が好きだな。でもアニメの先に随分と複雑な人間関係が待っているようで,原作を読んだらもっと深く楽しめるのかも。


ログ・ホライズン 円卓崩壊(第3シリーズ)

 原作は「小説家になろう」の小説。第1シリーズ放映は2013年,第2シリーズ放映は2014年ですっかり忘れていたので,事前に第1・第2シリーズを見て視聴した。
 レイネシアに結婚話が持ち上がり,大地人との関係を巡って対立し円卓会議も崩壊。クラスティが消えたD.D.Dは解散している。クラスティは中国サーバーに転移していたことが判明。最古の古来種レリア=モフール&リトカ=モフール姉妹がログ・ホライズンに加入し,ミノリはシロエに習ってレイドマスターを目指して頑張る。原作が完結していないこともあり,今回も中途半端な状態での終了になったと思う。


Re:ゼロから始める異世界生活 第2期後半

 パックが去り,スバルとの絆が深まったエミリアは試練に挑戦。
 ガーフィールとフレデリカの過去,ロズワールとベアトリス,聖域のまとめ役であるリューズと強欲の魔女エキドナの過去。試練の中で見えてくるエミリアの過去。
 あらゆる過去が明らかになり現在と繋がって終わりへと向かった。しかし聖域が出てきてから話がややこしく,理解ができないままに終わってしまったのと,レムの問題は解決しないままだったのとで,消化不良。長い物語の最終回は大して感動も感激もなくて残念だった。


OVA:Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆

 Netflixにて視聴。氷の中から目覚めたエミリアがパックと契約するまでの物語。エミリアの出生やパックの存在については貴重な情報で,リゼロの根幹にも関わる物語とも言えるのではないか。パックとの契約が解除される第3期の前に見ておくのが良い。


ゆるキャン△ SEASON2

 年末のアルバイトに勤しむなでしこに千明。初日の出を見るためのソロキャンを計画するリン。リンは少し性格がまるくなったようだ。
 なでしこが可愛いので許すが,ファンタジーとは言え女子高校生にソロキャンをさせるのはどうかと思う。あと,見延から御前崎や石廊崎まで高校生が原付で行くのは無謀だと思う。大学生という設定なら全部OKで憂いなく見られるのに…。まぁ文句や違和感は我慢するとして,風景は綺麗だった。


転生したらスライムだった件 第2期第1部

 登場人物が多い上に前回の視聴から時間が経っていて,ウルフやゴブリンやオーガなど主要人物以外は誰が誰だかよく分からずに見たが,あまり問題ではなかった。新たな敵の登場とリムルの本気の怒り,リムルの進化。7月からの第2期第2部では次の戦いが始まる。


のんのんびより のんすとっぷ(第3期)

 相変わらずれんげは小学校1年生だし,蛍は5年生,越谷家の兄妹はみんな中学生だ。夏海・小鞠の兄の卓(すぐる)が卒業し,綺麗にラストを迎える。ひか姉やこのみなど高校生や,れんげより1歳下のしおり,駄菓子屋の楓など,メインキャラの5人以外の人物が登場する機会が増えた。


ワールドウィッチーズ発進しますっ!

 2019年放映『ストライクウィッチーズ 501部隊発進しますっ!』に続くストライクウィッチーズの日常もので,501部隊と502部隊の物語が交互に放映される形式。しかし501に比べると502は馴染みが薄い上に全体的にキャラも薄いので,501と並べるてキャラクター劣化コピーぶりが際だって残念な感じだった。501だけで良かったのでは…。


八十亀ちゃんかんさつにっき 3さつめ

 今まで通り八十亀ちゃんを愛でつつ静岡も加えた東海4県について面白おかしく知っていくシリーズ。予算削減なのか,1期や2期の番組後にやっていたオマケコーナーが全く無くて残念だった。続きも期待。


五等分の花嫁∬

 一応,1期の冒頭の結婚式の場面に辿り着いて終了。
 しかし,結局ぼかされていて,結婚相手が誰だったのかわからなかった。五月? でも写真の女の子は四葉だ。最終回まで見たのに結婚相手が誰だったのかわからず,ネットで調べる始末。もう少しわかりやすく…。。。  そもそも風太郎があまりにも魅力ない男だったので,姉妹達の気持ちに同調できなかったのも問題だった。


PUI PUI モルカー

 羊毛フェルトで作ったモルモット形の生きている車が色々なことをする3分アニメ。子供向けのようだがネットで話題になったので視聴。


はたらく細胞!!(第2期)

 たんこぶやニキビ,獲得免疫やピロリ菌,乳酸菌に始まり,最後は二度目のがん細胞との戦い。


はたらく細胞BLACK

 不健康な生活をしている身体の中の物語。喫煙やアルコール,カフェインの影響,性的興奮状態の仕組みや脱毛,淋菌,更に肺血栓や胃潰瘍,痛風,心筋梗塞と,身の毛もよだつ状況での細胞達の活動が描かれる。まじブラックだ。だが本編と同じく分かりやすく説明されていて勉強になる。


無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜

 今の段階では未だよくある異世界チートもの。中の人(前世)の杉田智和さんが実に良い味を出しているので見ることにした。物語が進んでようやく単なる異世界チートものから脱却し独自の世界観が見えてきて,物語が面白くなりそうだったのに,そこで終わってしまった。続きを期待したい。


怪物事変

 ひたすらアメリカンなピザ(イタリアンなピッツァではなく)を食べたくなるアニメ。原作は『ジャンプスクエア』で現在も連載中。人間界に共存する怪物(けもの)たちの物語。
 主人公の13歳の少年夏羽(かばね)は,人間と屍鬼(クーラー)を親に持つ半妖。叔母の家で酷い暮らしをさせられていたのを化狸である隠神(いぬがみ)に助けられ,隠神の探偵事務所で働くことになる。探偵事務所には様々な怪物案件がやってくる。また,同僚である蜘蛛(アラクネ)の織(しき)や雪男子(ユキオノコ)一族の晶(あきら)にも各々の辛い物語がある。


この音とまれ!

 第1期は2019年春,第2期は2019年秋。原作は『ジャンプスクエア』で現在も連載中。
 高校生の部活もの。廃部寸前の部に才能がある人物や問題児が入部したり,先生の指導力が半端じゃなかったりで見る見る這い上がっていく典型的な青春ドラマだが,部活の内容が「琴」というのが珍しい。琴の音色など真面目に聞いたことがなかったので,聞く機会になって良かったと思う。典型的な部活青春ものだが,登場人物一人一人は魅力的でキャラが立っており,物語も面白い。