アニメ覚え書き(2021年7月~9月)

旧作も含めこの期間に見終わったアニメの備忘録。

小林さんちのメイドラゴンS(第2期)

 1期は2017年冬アニメ。新たに混沌勢のイルルが登場したが1期と変わらない,そして原作と変わらない雰囲気で楽しく視聴した。原作はまだまだ残っているので更に続きが作られるだろうか?

ミニドラ

 「小林さんちのメイドラゴンS」放送記念連続ショートアニメ劇場。本当にあっという間に終わるショーとアニメで,気楽にどんどん見られる。1話1話オチがあって楽しめて良いシリーズだった。


乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X

 1期は2020年春アニメ。1期が切りよく終わって物語も終了した感じだったので,どんな2期なのかと思って見はじめた。お馴染みの人物達がカタリナを中心に集まって何やかや学生生活を送るのは同じだが,1期で悪役令嬢としてのカタリナは終わっているし,破滅フラグの悪役令嬢はどこへいった?表題に偽りあり!だった。それなりに面白くはあったが,事件起こりすぎで無理に作った続きぽかったし,1期に比べるとぱっとしなかった。劇場版が決定しているが,どんな物語になるのか?


魔法科高校の優等生

 劣等生版とはキャラデザがかなり違っていた。が,誰が主人公にしろ,お兄様礼賛物語ってことは同じ。人気コンテンツだし劣等生版も一応全部見ているので視聴。背景がチープすぎるのとか,止め絵が多すぎて紙芝居が多いこととか,100年後とは思えない設定が多すぎるとか,そういうのに目をつぶっても,何がそんなに人気なのか私にはよくわからない。回が進むにつれてだんだんどうでも良くなって楽しめていなかった。


ピーチボーイリバーサイド

 漫画原作で,作者は『小林さんちのメイドラゴン』と同じクール教信者さん。主人公のサリーの巨乳具合がトールやエルマを彷彿とさせ,同じ作者なのだなと思わされる。同時期に同じ作者の異なる作品がアニメ放映されるのも珍しいのではないか?
 ピーチボーイ=桃太郎で,鬼退治のアニメだが,小林さんが人間とドラゴンの物語であるように,こちらは人間と鬼の物語。異種族の事情がテーマの一つになっているところは共通している気がする。今期(2021年夏)見ていたアニメの中では面白い方だった。


ペンギン・ハイウェイ

 劇場公開2018年8月。原作は『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』の森見登美彦(もりみとみひこ)の小説。Netflixにて視聴。
 すごく変な物語だった。アオヤマ君という科学が好きな小学校4年生の男の子が,憧れのお姉さんや不思議な現象との遭遇で少し大人になる物語…だろうか。風景がとても綺麗だった。森見登美彦さんにしては珍しく舞台設定は京都ではなく生駒市とのことだ。


劇場版 のんのんびより ばけーしょん

 2018年8月公開。夏休みにみんなで沖縄県の竹富島へ行く物語。 Netflixにて視聴。
 美しい沖縄の風景を背景に沖縄バケーションを満喫する。民宿には夏海と同じ年の少女あおいがいて,島を案内してもらったりバドミントンで遊んだり。田舎の風景という意味ではぶれないが,舞台が沖縄というのが新鮮で,しかし,いつもの「のんのんびより」が繰り広げられる。71分の短い劇場作品ということもあり,気楽に楽しめた。


かげきしょうじょ!!

 原作は斉木久美子さんの漫画。宝塚歌劇とか全く興味ないのだが,第1回から面白くなるオーラが満ちていて,今期1番の楽しみなアニメになった。
 アニメが面白かったので原作も読んだ。主人公のさらさは,言わばありがちな天才少女不思議ちゃんなのだが嫌みがない。登場人物は多いが,各々の背景も描かれ興味が持てる。文句なしに面白かった。続きも作って欲しい。


ぼくたちのリメイク

 原作は木緒なち(きおなち)さんのラノベ。人気作品のようだったので視聴してみた。結果,今期一番のつまらないアニメだった。
 一番ひっかかったのは,リアリティの無さだろうか。現代の日本が舞台で異なる世界線へタイムスリップする。そういった物語の前提になる大きな出来事に説明がなくても,そこは面白く見られれば問題ない。が,その後の主人公の言動があまりにも「ないわー」と思うことばかり。タイムスリップも幾ら何でもご都合主義すぎて,だんだんイライラ。後半は「この主人公不幸になればいいのに」って気分になってしまった。最初の世界や3番目の世界で出会った人々がこれではあんまりだ。原作ではもっと納得出来るストーリーなのか? あと,幾ら何でも同人ゲーム作りを舐めすぎでは…。悪い意味で忘れられないアニメになると思う。制作者の皆さんごめんなさい。でもちゃんと見たから。


カノジョも彼女

 これも今期の人気作品のようだったので見てみた。原作は『週刊少年マガジン』で連載中の漫画で,作者は『アホガール』のヒロユキさん。
 「二股で付き合う」という反倫理的な物語なのだが,第1話からして,『ぼくたちのリメイク』より遙かに面白く惹きつけられた。もう本当に全力でバカな話のオンパレードだが,けっこう考えさせられた。二股がいけないだなんて,現代社会の日本での価値観であって,人間として絶対的に正しい価値観でも何でもないのだ。本人達が幸せでそれを望むなら別に悪くはないのでは? 同性同士の結婚がいいのなら,複数人での結婚だっていいではないか? いや,ほんとすっごくバカなところを楽しむギャグアニメなのだけど,面白かったし考えさせられた。良いアニメだった。


探偵はもう、死んでいる。

 今期の人気作品ということで視聴。原作はラノベ,作者は二語十(にごじゅう)さん。
 「たんもし」と略されるらしく,『ラノベ好き書店員大賞2020』文庫部門大賞を受賞した人気作品とのこと。君塚君彦(きみづかきみひこ)という中学生の少年が,いきなりシエスタという美少女名探偵の助手になり,3年間秘密組織と戦い,シエスタが死んで1年。謎の少女が現れて…。
 結論として私にとっては雰囲気だけの腑に落ちないアニメだった。面白くなかったとまでは言わないけれど,何かよく分からない設定や理屈が多すぎて納得出来ないまま終わってしまった感。結局シエスタは何なの人間ではないの?


転生したらスライムだった件 第2期第2部

 登場人物がやたら多いのに第2期に入った時点でかなり物語を忘れていたので,ストーリーについていけないまま見た感じだった。リムルとその配下が一々チート過ぎるし,失敗も挫折も起こらないので物語への興味も今ひとつだった。でもまぁそもそも安心してチートを楽しむ物語だから仕方ないかな。あと魔法学校やひぐらしよりは面白かったかな。物語はまだ続くようなので続きは見ようと思う。

ハーモニー

本の概要

  • ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
  • 著者 伊藤 計劃(いとう けいかく)
  • 出版 早川書房
  • 発売 2010/12/8

21世紀後半、“大災禍”と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

「BOOK」データベース

物語の背景

 本書は惜しまれつつ早逝した伊藤計劃氏の『虐殺器官』に続く物語。

 『虐殺器官』の後の世界が描かれているとも考えられ,そういう意味では『虐殺器官』読了後に読むとより良いかもしれない。が,本書単独で完結しており,物語を楽しむ上で『虐殺器官』読了の有無は特に問題とならない。

 2019年アメリカに端を発する「大災禍」を経て,核と未知のウイルスの蔓延で世界は崩壊寸前に至った。
 その教訓から,国と政府による世界は終わり,21世紀の半ば,世界には「大災禍」の再来を防ぐための新しいシステムが誕生している。人々の体には医療デバイスが埋め込まれ,新たな統治機構「生府」の下で,人は限りなく健康で幸福な生活を送るようになっていた。

 食事や見るべき映画読むべき本まで心地よく推奨されており,外れる行為があれば体の中のデバイスが教えてくれるのだ。
 生府に統治された地域では,建物も木々も心地よいピンク色。人々は不快なものに出会う機会もない。デバイスを埋め込まれた人間は一人一人が大切な社会のリソースであり,自分の体は社会のもの,自分のものではないのだった。

 そんな世界に居心地悪さを覚えていた女子高校生の霧慧(きりえ)トァンは,同じ気持ちを共有できる友人たち,御冷(みひえ)ミァハ・零下堂(れいかどう)キアンと出会う。
 同志だった3人のたどった運命は,各々があまりにも過酷なものだった…。


私が私であるということ
― SFというより哲学の書?

誰も彼もが互いのことを気遣うこのご時世。まさか、それを積極的に勘弁願いたいと思っている人間が身近に存在する、なんてことは、善意の押しつけに染まりきったわたしたちの世代には想像しにくい。仕方のないことだ。我らの世代は、お互いが 慈しみ、支え合い、ハーモニーを奏でるのがオトナだと教えられて育ってきたから。

位置: 1,457

 
 自分であるということは何だろう?
 人は何故「自分であること」を求めるのだろう?

 幸福とは何だろう?
 選択の自由があるのは幸せなことだ。
 しかし心地よいお勧めだけで事足りるならそれで幸せだろうか?

 医療デバイスが埋め込まれた病気が克服された世界。
 一見,この物語は自分の現在とかけ離れた絵空事であるかのように思える。
 しかし,よく考えてみると,決してそうではない。
 現代の日常にはレコメンドが満ちあふれている。

 Netflixでお勧めだけ見ていれば時間はどれだけだって潰せるだろう。
 Amazonで買い物をすれば次々とレコメンドが表示され,今まで知りもしなかった製品が突然欲しくなって買ってしまうかもしれない。

 時に面倒で煩わしい決断というステップを排除し,これらレコメンドに従っているだけの生活になったとして,それは不幸だろうか?


ユートピアとディストピアは紙一重

 所詮,我々が今現在持っている幸福だの不幸だのという価値観は,現在の社会で,この場所で生まれ育った者限定の価値観でしかない。
 不幸にも幸福にも絶対的基準は存在しないし,同じ人間であっても生まれた時代や場所が変われば異なった状況を幸福と感じるだろう。

 この物語が描くハーモニーの世界を,2021年の日本で暮らす私は『1984年』の世界と大して変わらないディストピアだと感じた。しかし,考えようによっては確かにユートピアなのかもしれない。

 選択する,意志決定を行う,そういったことと無縁に生まれ育って,病気も痛みも知らず暮らすなんて,そんなの生きているとは言えない!と思うのは,意志を持って選択し痛みや苦痛を感じて生きるのが当然だったからに過ぎない。
 そういったことを何も知らずに生まれ育ったのだったら,意志の存在も病気も同等な野蛮なことでしかないだろう。


アニメとコミック


 本作は,「Project Itoh」により劇場版アニメが2015年12月に公開されている。
 『虐殺器官』も2017年2月に公開となっており,Blu-rayにもなっている。またコミカライズもされているので,文字の本を読む時間はないが内容は気になるという方は,アニメやコミックから物語に入っても良いかもしれない。