ハチミツとクローバー

ハチミツとクローバー(Honey and Clover)

羽海野チカ氏による漫画作品で、通称「ハチクロ」。
雑誌連載は、2000年~2006年。
テレビアニメ、テレビドラマ、実写映画にもなった作品なので、ご存知の方も多いことだろう。

舞台は美大。学年も専攻も違う5人の若者を描く群像劇だ。
美大に集う彼らだけに、みな才能があり個性的。
大学生活を送る彼らは、当然、恋愛で苦しみ才能で苦しみ、将来への不安に悩む。
そして散り散りに、各々の道を目指して旅立つ。

高校生や大学生の読者なら、等身大の彼らの中にすぐに溶け込んでゆけるだろう。
遙か昔にそんな時代を終えた大人だったら、甘く苦しく切ない昔の記憶を重ね、当時の心を少しばかり思い出すだろう。
若い頃に未来への不安や恋愛で悩んだ経験がないという人は、おそらくとても少ないだろうから。

アニメやドラマ、映画にまで展開される作品となったのは、そんな感じで、誰もがその人なりの立場を胸に抱きつつ楽しめるコミックだからだろうと思う。

主要登場人物の5人を紹介しておこう。

竹本祐太 建築科。初巻19歳。真面目で気が利く。物語の最初からはぐみに恋をする。
真山巧 建築科。初巻22歳。優秀でモテる。好きな女性は他にいるが山田は大切。
森田忍 彫刻家。初巻24歳。竹本と同時にはぐみに恋。謎な行動が多い天才肌。
花本はぐみ 油絵科。初巻18歳。天才肌で人見知り。とても小さい。
山田あゆみ 陶芸科。初巻21歳。器量よし才能もある。真山への報われない恋に苦しむ。

物語は10巻で完結。特に誰が主人公というわけでもなく、5人の成長が描かれる。
各々悩み苦しみながら時を重ね、それぞれの方法で卒業へ向かって大学生活を紡いでゆく。青春ってホント輝いているのに辛いことばかりだね?
時には潰れないようかつ丼をほおばりながら、時にはひたすら自転車のペダルを漕ぎながら、若者たちの一年には変化がいっぱいなのだ。

彼らが吐露する想いは、たぶんかつて読者が経験した想いであり、これから感じる悩み。だから読んでいると一言一言が胸に刺さる。

★☆★☆★

「努力する」か「諦める」か
どっちかしかないよ
人間に選べる道なんて
いつだってたいてい
この2つしかないんだ

5巻 59ページ

★☆★☆★

あんなに泣いてる彼女からでさえ
ぼくが感じたのは ただ果てしない
つよさ だった

6巻 85ページ

★☆★☆★

「好きなものを」「楽しんで」という言葉は美しい
―でも その 何と むずかしい事か………

7巻 106ページ

★☆★☆★

自分が生きる道のよりどころを何に求めるか。
自分の人生をどんな光で照らして進んでいくか。

恋愛が全ての人もいれば、恋愛以上に手放せない何かを持っている人もいる。
どちらの道が正しいかなんて正解はない。
選択しなければならない瞬間がきたら、本能で決めて進んでいくしかないのだ。

芸術という厳しく才能を求められる世界に生きている彼ら彼女ら。
その繊細な心を持って恋をし恋で苦しむ。
むくわれない恋に意味などないと断じてみても、想いは簡単に消えてくれない。
そんな恋の病を乗り越えて、自分の人生に必要な物を、いつか強い心で選び取る。

★☆★☆★

―なぜか
ただの1枚も写真が残っていない僕らには
あの時
目の前に浮かんだみんながいる風景だけが
瞳の奥に焼き付いて
一生消せない1枚になった……

9巻 33ページ

★☆★☆★

若い時代の仲間との時間というのは、本当にこうしたものだったと思う。
その時は一生懸命。思い出の形見を残している時間も余裕もなかった。
何もかもが過ぎ去ってしまったあと、心の中でセピア色に封鎖された、甘い痛みに包まれ永遠に輝く形見を見いだす。
そんな形見が自分にも存在したことを、たくさん思い出させてくれる物語だった。


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ハチミツとクローバーのヒロイン花本はぐみドール

妹さえいればいい。11 (ガガガ文庫)

小説がまったく書けないという大スランプに苦しむ伊月を、恋人の那由多は優しく見守る。土岐や京は伊月を復活させるための方法を模索するのだが、結果は芳しくない。一方、女の子であることを隠さなくなった千尋にも、大きな変化が訪れるのだが…。そんななか、第16回GF文庫新人賞の授賞式が開催される。青葉や木曽たちが受賞してから、はやくも一年の月日が経っていたのだ。怒涛の流れに翻弄されながらも、主人公たちは足掻き続ける―。大人気青春ラブコメ群像劇、衝撃の第11弾登場!

「BOOK」データベースより

『妹さえいればいい。』はこんな作品

妹さえいればいい。

11巻を買うのは10巻までを読んだ方ばかり!
とは思うが、一応作品紹介を少し。

アニメ化された『僕は友達が少ない』の著者、
平坂読(ひらさかよみ)氏のライトノベル。

イラストは、
『変態王子と笑わない猫。』等で知られるカントク氏。

2015年からガガガ文庫(小学館)より刊行され、
2017年秋にアニメ作品が放映された。

『妹さえ』というい表題で引いてしまうかもしれないが、
内容はごく真面目な青春群像作品。

妹大好きラノベ作家の羽島伊月(はしまいつき)が主人公で、
彼を取り巻く作家や編集者たち、
彼の父親や妹など家族を中心に物語は進む。

主人公がラノベ作家ということで、
ラノベを取り巻く業界の裏話も詳しく描かれ興味深い。

文章がしっかりしており美しく、
多くのラノベに見受けられる冗長さもなく、
オタク受けを狙う用語の連発などもなく、
私はストレスなく、大変興味深く楽しく読めた。

10巻以上続いて冗長さにストレスを感じずに読めたラノベは
この作品が初めてかも知れない。
ライトノベルの中でもお気に入りの作品だ。

妹さえいればいい。11巻 を読んで

本のデータ:
  紙の本の長さ: 240 ページ
  出版: 小学館 (2018/12/23)

妹作品を書けなくなった伊月があがく巻。
そして、千尋が初恋に悩む巻。

千尋の恋については何巻も前から伏線があったので
気づかなかった読者はいないと思われるが
ようやく千尋自身が向き合っていく。

兄の心配をしつつ自分の恋愛も。
スーパー高校生の千尋もさすがに大変そう。

伊月の方も深刻で、
新人授賞式パーティーも楽しめず壁の花。

伊月を尊敬する後輩が現れたり
先輩作家の海津がアドバイスをくれたり、
アシュリーが昔話をしてくれたり。

千尋をきっかけに父親と会ったり
とどめのように伊月の初恋の人に出会ったり。

最終幕へ流れ込むのかと思いきや、
まだまだまだまだ…
波乱が続きそうな感じで相変わらず面白かった。

あと、今回は帯の話が興味深かった。
第15回新人の木曽義弘の新刊の帯を考えるのだが、
最大限に遊びつつ帯の効果を説明された感じ。

今回もテンポ崩れず面白く、相変わらずのお勧めラノベでした!

1巻~10巻を振り返って

1巻
TRPGと千尋ちゃんの秘密まで。
ちょっとえっちなイラストがあるので電車で読むとき要注意。

2巻
那由多が京に懐いている理由、
お花見の日の千尋と「ぷりけつ」の最悪な出会い、
TRPGの続きとか春斗の「絶界の聖霊騎士」のアニメ第1回放映など。
「絶界の聖霊騎士」の件は、
アニメで見る以上に裏がよくわかって辛かった。

3巻
京の誕生日、
遊園地・動物園・水族館と恋愛それぞれの事情。
伊月が小説を書くようになるまでのこと。
物語の節々に登場人物への質問コーナーが挟まれ、
女性陣のスリーサイズや好きな作品等などの回答がある。

4巻
あとがきで著者自ら下記のように書いている。
「今回は僕が過去に書いてきた作品の中で、(他のシリーズはゲームシナリオを含めても)一番頭の悪いお話になったような気がします。」
まぁそんな巻。
蚕の出現、蚕とぷりけつの対決。
これが信じがたい全裸vs下着バトルとなる。
その後更に信じがたい蚕と那由多の全裸シーン。
まるで全裸担当巻?
おまけページに「パンツリボンのつくりかた」
パンツリボンは厚手の生地のパンツで作るのがお勧めだそうです!

5巻
編集部での京さんの巻。
『妹すべ』のアニメ化が決まり、
蚕さんの父親が出てきたり、
新人賞の選考会があったり。
春斗が尊敬する先輩作家の海津が初登場。

6巻
失恋から立ち直る方法とは。
ぷりけつ先生の目覚め。
那由多の自分磨きにTRPGの続き。
新人賞パーティにアフレコ。
ヒロインのようでラスボスのようでヒロインな那由多。

7巻
各々の反応、動き出す関係。
新人作家たちが加わり、
関ヶ原幽を含め表紙の3人の過去が語られる。
また業界の裏事情も見え隠れする。

8巻
クリスマスにコミケの季節。
お漏らし事件と新人作家たちのこと。
羽島の父と千尋のこと。
蚕と京と那由多の新しい生活。
羽島父の47歳の若さでアニメ=サザエさんはないと思う…。
せめてドラゴンボールとかガンダムとかドラえもんにしてあげて><!
千尋ちゃんの可愛さ全開的な巻だった。
千尋ちゃんには是非是非幸せになってもらいたい。
秋葉原デートがとても良い感じだったのだが…。

9巻
読み始めたら止められなかった巻。
京さんの就活の話や青葉ちゃんの本の評判。
ロリキャラの撫子ちゃんが登場したりするが、
待ちに待った千尋ちゃんの巻だった。
続きがとても気になる。
千尋ちゃんには是非とも妹として幸せになってもらいたい。
あと、カントクさんあとがきの青葉ちゃんが可愛い。

10巻
冒頭の伊月父(羽島啓輔)と千尋母(加納棗)の物語。
そして千尋の理由の物語。
啓輔47歳,棗36歳。
大人の物語もキチンと書いてくれて嬉しいし、面白かった。
伊月の台湾出張はちょっとお休み会って感じ。
妹になった千尋と妹ができた伊月、
伊月の描写に注意しながら二度目を読みたい巻。
伊月はどう解決するのか、続きが楽しみ。