アレックスと私

  • 書名 アレックスと私 (ハヤカワ文庫NF)
  • 著者 アイリーン M ペパーバーグ
  • 翻訳 佐柳 信男
  • 価格 Kindle 851円
       ハードカバー 1257円
       文庫 946円

アレックスのこと

 インコが,鳥が好きな人ならアレックスの名前を耳にしたことがあるかもしれない。
 アレックスが話題になっていたのはもう15年くらい昔のこと。
 日本語で「鳥頭」といえば3歩で恩を忘れるバカを指すし,英語でも「bird brain」は同じくバカとか間抜けという意味を持つ。
 鳥はバカな生物だと,人間はずっと決めつけてきたのだ。
 そんな人間の認識を覆したヨウムの名前。それがアレックスだ。

 アレックスは数や色の概念を理解し,自らの考察で零を発見し,自らの感性で新しい単語を作り,更に100語以上の英単語を使って人と意思疎通した。

 けれど,アレックスは特別賢いヨウムだったわけではない。
 アレックスはシカゴのペットショップで育てられていた8羽の雛の中から,ペットショップの人にランダムに選んでもらったヨウムだった。ただ,幼い頃から常に人と暮らし特別な訓練を施された,特別な環境を持ったヨウムだっただけだ。
 そういう環境の下でヨウムがどれほどの学習能力を発揮できるものであるか,人間は初めて知ることになった。

 しかし,2007年9月,アレックスは31歳の若さで突然逝ってしまった。
 50年というヨウムの寿命を考えるとあまりにも早い死で,これからアレックスの身の上に考えられたあらゆる可能性はここで潰えた。
 アレックスの死という悲しいニュースはインターネットを通じてあっという間に知れ渡り,おそらくアレックスを知る世界中の鳥愛好者が悲しんだと思う。そのニュースを知ったときのショックを,私は今も覚えている。


 人とコミュニケーションを取るために人間の言葉を喋り,色や数の概念を理解したヨウム,アレックス。まだまだ沢山の可能性を秘めていたのに,ある朝突然,逝ってしまったアレックス。

 博士とアレックスの最後の会話は,建物が消灯になる直前のいつもの会話だった。

 アレックスは私に「イイコデネ。アイ・ラブ・ユー」と言った。
 私は「アイ・ラブ・ユー・トゥー」と答えた。
 「アシタ クル?」と聞かれたので、「うん、明日来るよ」と返事した。

『アレックスと私』第8章

 本書はペパーバーグ博士による追悼手記だ。
 ペパーバーグ博士の気持ちがかなり落ち着いてから,当時を振り返りつつ書かれている。

 冒頭には,アレックスの訃報を伝えた数々のメディアの話や,アレックスを失った博士の気持ち。その後,迎えた時から最後の日までのことが淡々と綴られている。
 アレックスの訓練方法,一緒に訓練された後輩ヨウムたちのこと,アレックスと研究室をとりまく人間たちとの関係,アレックスの性格,アレックスと他のヨウムとの関係。また,女性科学者として経験した悔しい出来事や鳥類を過小評価する文化で鳥類の能力について研究する難しさ。


 頑ななまでに人間以外の動物の能力を過小評価し,更に哺乳類と比べて鳥を過小評価したがる学者達の姿勢は,とても科学的とは思えず不思議なほどだった。
 ペパーバーグ博士が身を置いていたのは,神が人間を万物の支配者として創造したとするキリスト教の影響で,科学者を含め皆が「人間は他の生物と根本的に違う」と信じて疑わない世界。特に言語は,他の動物と人間が違うことの証として譲れない一線で,そこへ切り込んでいく博士の歩んだ道は,本当に険しく苦しいものだったのだ。資金も乏しく,暖房の温度を14℃に設定し,豆腐ばかり食べて暮らした時期が続いたのだという。
 あんなにも有名になったアレックスを研究していた博士なのに,そんなにも厳しい立場にあったとは!


 鳥が賢いこと,特に長寿であるインコ・オウムの賢さは並大抵ではないと知っていた私も,この本を読み進み,アレックスの能力に驚嘆するばかりだった。
 アレックスが大好きで美味しいと思うリンゴのことを,同じく美味しく大好きな食べ物,バナナとチェリーの特長を備えた食べ物として「バナリー」と呼んだり,ケーキのことを「美味しいパン」と表現した話には目を見張った。

 また正しい答を言えずにいる後輩ヨウムに「このバカ鳥」と言ったり,悪戯して人間を怒らせたとき「アイムソーリー」と謝る話にも息をのんだ。そう言ったアレックスに反省の気持ちがあったかどうかまでは分からないが,アレックスは「アイムソーリー」が関係の修復に役立つ言葉である事を理解し,適切に使用したのだ。

 あぁ人間は,どうして他の動物たちをこんなにも侮っているのだろう? まず彼らを理解していない自分たちの無知さと向かい合わなければならないのではないか。


 巻末には,博士へのインタビュー及び,「よくある質問」への回答も載っている。

 ちなみに,アレックスの名前の由来をこの本で初めて知った。
 「Project ALEX: Avian Language Experiment」(鳥類言語実験)

 アレックスの名前は,迎えるずっと以前から「ALEX」と決まっていたのだった。
 


 翻訳書が文庫で気軽に読めるようになり,更にKindle化されたのは大変意義があり嬉しいことだ。
 ヨウムが,そして鳥という生物が如何に賢いか,人間が他の生物を如何に侮っているかがよく分かる本書が,これを機会に多くの人に読まれることを切に願う。


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インガルス一家の物語 (1)

目次

  • インガルス一家の物語について
  • 繰り返し読んで楽しめる物語
  • 人種差別と西部開拓
  • 大きな森の小さな家―インガルス一家の物語〈1〉 (世界傑作童話シリーズ)
     ウィスコンシン州でのインガルス一家
  • 大草原の小さな家―インガルス一家の物語〈2〉 (世界傑作童話シリーズ)
     カンザス州モンゴメリ郡でのインガルス一家
  • プラム・クリークの土手で―インガルス一家の物語〈3〉 (世界傑作童話シリーズ)
     ミネソタ州ウォルナット・グローブ時代のインガルス一家
  • シルバー・レイクの岸辺で―インガルス一家の物語〈4〉 (世界傑作童話シリーズ)
     ダコタ・テリトリーのデ・スメットでのインガルス一家
  • 農場の少年―インガルス一家の物語〈5〉 (世界傑作童話シリーズ)
     ワイルダー家のこと
  • インガルス家とワイルダー家の年表
  • 小さな家シリーズの覚え書き
     マーサ・モース・シリーズ
     シャーロット・シリーズ
     キャロライン・シリーズ(クワイナー家の物語
     ローラ・シリーズ(インガルス一家の物語)
     ローズ・シリーズ
  • 参考

インガルス一家の物語について

 テレビドラマ『大草原の小さな家』で知られるローラの物語の原作シリーズ。
 主人公ローラのお母さんであるキャロラインの少女時代の物語があるので,そちらを先に読むと,物語に出てくるローラのおじさん・おばさんのことがわかりやすくお勧めだ。

クワイナー家の物語(全7冊)

 『大草原の小さな家』の邦題で知られるインガルス一家の物語は,一家がウィスコンシン州の森の中で暮らしていたローラ4歳の年に始まり,一家の開拓生活最終地となるダコタ・テリトリー(サウス・ダコタ州)へ移住するローラ13歳の年までの4冊が,福音館書店から出版されている。
 近年はいくつかの出版社から異なる翻訳者と挿し絵の本も出版されているが,原作と同じガース・ウィリアムズの挿し絵で読むことができるのは福音館書店の本である。
 この4冊に,ローラの夫となるアルマンゾ・ワイルダーの少年時代を描いた『農場の少年』を加えた5冊が,福音館書店から発行されている恩地三保子訳,ガース・ウィリアムズ絵の前半5冊となる。


 ローラとアルマンゾが結婚するまでのサウスダコタ州での生活と,その後に見つかったローラの日記を含めた後半は,岩波書店から発行されているものが,原作と同じガース・ウィリアムズの挿し絵で読むことができる。

 岩波書店版は,古い版(1955年~)である鈴木哲子訳では,恩地三保子訳で「とうさん・かあさん」だった呼称(原作では”Pa””Ma”)が「父ちゃん・母ちゃん」と訳されるなど雰囲気が随分異なるが,新訳の谷口由美子訳(2000年~)では訳者が異なる違和感がかなり改善されており,上下巻に分かれていたものが1冊にまとめられるなど読みやすくなっている。
 そもそも岩波書店から出版されている後半の方が日本では先に出版されており,鈴木哲子訳の方が先。当初違和感があったのは福音館書店の恩地三保子訳の方であろうと思うのだが,物語の順番から読むと福音館書店を先に読むことになるのだ。


 なお,この記事の中で実際のインガルス一家について少々言及しているが,これらは最後に記した2冊の参考資料から得た情報を用いている。
 この2冊の中でも地名の表記や年号に揺れがあったが,筆者はインガルス一家の研究者でもない単なる一読者に過ぎない上,この記事の目的は正確なインガルス一家をたどることではなく,大まかに理解することなので,この2冊の参考書以外で調べることはしなかった。


繰り返し読んで楽しめる物語

 私がこの物語と出会ったのは1973年。まだ日本ではドラマも紹介されておらず,この物語は有名ではなかった。偶然学校の図書室で見つけて借りて読んだのだった。

 その後,テレビアニメ『草原の少女ローラ』が1975年~1976年に放映され,同年1975年にアメリカのテレビドラマ『大草原の小さな家』の放映が始まった。しかし,先に本で物語を読んでいた私には,どちらにも本で読むほどの魅力を見いだせなかった。

 結局ドラマは最初の方だけしか見ていない。本は全冊購入し,翻訳・原書合わせて何度も繰り返し読んできたが,何度読んでも飽きることがなかった。おそらく通して20回は読んでいると思う。
 子供の頃はローラの視点で,大人になってからはキャロラインの視点で,更に年齢と共に蓄積してきたアメリカの歴史と照合しながら読み,毎回新しい発見がある。

 インターネットの時代になった今,昔は想像するだけだった本の中の動植物を画像検索したり,インガルス一家が住んだ街のストリート・ビューを見たりしながら読めて,楽しみ方も倍増した。
 また,当然ながら子供の頃とは物語を読む視点も異なっているので,物語から読み取れることも異なっていて,何度繰り返して読んでも同じ本を読んでいるとは思えない新鮮さがある。本は読み直してみるものだと,このシリーズを読む度に改めて思う。


人種差別と西部開拓

 「米先住民や有色人種を非人間的に描いた表現がある」などとし,米国図書館協会で「ローラ・インガルス・ワイルダー賞」が「児童文学遺産賞」に変更されたのは2018年のこと。
 『大草原の小さな家』の「人間は誰もいない。インディアンしか住んでいない。」のような箇所が問題視され,1958年に出版社は「人間」を「開拓者」に変更したそうだが,それでも当時の米国白人に典型的だった人種差別的な描写が出てくると問題視され続けた。このシリーズが多くの人の心を傷つけたため,賞の名前にはふさわしくないという見解らしい。

 書かれていることは当時の現実なのだろう。日本人の私はこの本によって当時のアメリカ白人の考え方の一つを知った。
 だが,日本人は人種差別に鈍感ということで非難の対象になっているとも聞く。確かにコロナ禍のアメリカで起こり世界各地へ広がっていった黒人差別問題の嵐が,私には今ひとつ理解できなかった。正直言って,そもそもあのような事件が起こること自体が理解不能だった。
 アメリカは世界の多くの国々の中でも最も親しみある国,よく知っている国であるはずなのに,実はほとんどアメリカの事など知らないのだということが,私があの差別反対運動の嵐から学んだことだ。アメリカの人種差別の実態は想像力の限界のはるか向こうにあるようだ。勿論人種差別は受け入れがたいことに決まっているが,アメリカ人が怒っている差別の実態を自分事として怒れるかと問われれば,現実の差別がどういったものなのか全く知らない私は,戸惑うばかりだ。
 アメリカにはアメリカの事情があり,アメリカの生活を全く知らない日本人にはその機微がわからないのだろうとも思う。

参考:「大草原の小さな家」作者の名前、米文学賞から外され 人種差別で – BBCニュース

 開拓者たちは,確かに差別や殺戮を繰り返した。逆に殺されたり怖い目にあったり理不尽な想いもした。この小さな家シリーズからもその一端を知ることができる。ローラ周辺の北部の白人側から見た現実がそこにある。
 現代となっては差別的と思える表現の数々は,ローラが当時の出来事を正直に赤裸々に綴ってある時代の証言であろう。

 アメリカ人たちは,殺し殺され,それでも人類史上例のないフロンティア精神で多くの開拓者たちが西へ向かい,新しい町を一から作り,新しい州が誕生していった。
 何もない場所に町を作る―それがどれほど厳しく大変なことか,現代日本人に想像できるだろうか。想像を絶するとしか言い様がないと思う。

 欧州から渡ってきた彼らの祖先は,現在既に持っている生活を捨ててまで,そして命の危険を冒してまでも自由と独立を求めて新天地を目指した。そんな移住者の血と精神を受け継いだ子孫たちは,臆することなく大陸の西への道を突き進んだのだ。
 本作は,そんな人達がつくった開拓時代の生活がわかる貴重なシリーズであることには違いないと思う。

小さな家シリーズの Index


大きな森の小さな家―インガルス一家の物語〈1〉 (世界傑作童話シリーズ)

 インガルス一家の物語の最初の1冊で,冒頭でローラは5歳。物語の途中で6歳の誕生日を迎える。

 18世紀後半,ウィスコンシン州の森の中の丸太小屋で,野生動物に囲まれてインガルス一家は暮らしていた。狩りをし,家畜を育て,燻製やバター,チーズを自作し,生活の中の小さなことを楽しみながら。
 21世紀の今となっては,燻製作りも豚の解体もメイプルシュガー作りも珍しい。

 先にも書いたが,特に『大きな森の小さな家』は,できれば先に,クワイナー家の物語を読むのがお勧めだ。
 大きな森ではとうさんとかあさんの実家の人達が近くに住んでおり,ローラのおじさんやおばさん,いとこたちが出てくる場面が多いのだ。このため,クワイナー家の物語を先に読んでおくと,とうさん(チャールズ)・かあさん(キャロライン)とローラのおじさん・おばさんたちの関係を把握でき,親戚づきあいの情景がよりよく思い浮かぶようになる。
 また,時代の流れによる様式変化も興味深い。
 例えば,小麦を脱穀する方法だ。キャロラインの子供時代,『せせらぎのむこうに』では,「からざお」を使って小麦を脱穀する方法が書かれているが,それから20年ほどの時が過ぎたローラの子供時代は,開拓地であるウイスコンシン州の森の中でも新しく発明された脱穀機で脱穀をする。


 この本で,かあさん(キャロライン)は大西洋側の東部で生まれ,結婚前はとてもお洒落で洋裁店で服を仕立てさせてばかりと書かれている。それを子供の頃から読んでいた私はずっとそう思っていたが,クワイナー家の物語を読むと,大西洋側の東部で生まれたのはかあさんのかあさんであるシャーロット。
 キャロライン・シリーズを読むと,キャロラインはウィスコンシン州のブルックフィールドで生まれ,イライシャおじさんの家に下宿してミルウォーキーの大学へ通っていた時に,ジェーンおばさんに連れられて初めて仕立屋へ行っている。
 大きな森でのメイプルシュガーのダンスでキャロラインが着た素敵なモスリンの服は,そのミルウォーキーで作った服なので,それ以降キャロラインはそれ以上のドレスを仕立てる機会はなかったのだろうと思われる。


ウィスコンシン州でのインガルス一家

 よく知られることだが,ローラの物語は本当に存在したインガルス一家がたどった道のりをそのまま描かれているわけではなく,物語として脚色したり,物語の構成のために出来事の順序を入れ替えたり省いたりされている。
 インガルス一家の研究をするのでなければ,物語として深く追求せずに読むのが良いのかもしれない。

 チャールズ・インガルス(父さん)とキャロライン・クワイナー(母さん)は,1860年2月にウィスコンシン州コンコードで結婚した。リンカーンが大統領に就任した年だ。
 1863年,チャールズとキャロラインは,ヘンリー(キャロラインの兄)とポリー(チャールズの妹)夫妻と共同で土地を購入し,ウィスコンシン州ペピンの「大きな森」へ移住。この地で,1865年1月にメアリイが,1867年2月にローラが誕生した。


大草原の小さな家―インガルス一家の物語〈2〉 (世界傑作童話シリーズ)

 ローラは6歳。
 ウィスコンシンの森はすっかり開拓され,人が増えてしまった。野生動物が住むような土地で暮らすのが好きな父さんは,家を売ってインディアンが住む土地へ移住することを決める。
 ペピン湖(ミシシッピ川)の氷が割れる前のまだ寒い季節に,一家は親戚の人達に別れを告げ,幌馬車で出発した。

 この巻では,オクラホマ州のインディアン・テリトリーで送った1年間の開拓生活で起こった出来事が語られる。シリーズの中でも特に丸太小屋や暖炉,井戸など土木関係の物語に詳しい。また,火事や病など,本物のフロンティア,近くに町も村もなく,隣人すらほとんどいない大草原の真ん中で暮らす厳しさを窺い知ることもできる。

 インディアンが住む土地の物語ということで,先住民のアメリカ・インディアンとの関わりや当時の白人のインディアンへの感情もしっかり書かれている。現代においては許されないような差別的な発言も随所に見られるが,それについては,巻末に日本女子大学教員の清水知久氏による「アメリカ・インディアンのこと」という解説が掲載されている。


 インディアンの土地へ行くために父さんは2頭のムスタング(小馬)を手に入れ,ローラとメアリイは2頭にペットとパティという名前をつける。
 この巻ではペットとパティが大活躍する様子が描かれるが,ムスタング種はスペイン人が北アメリカに持ち込んだ小型馬が野生化した種。人間に服従しない独立心に富んだ性格を持つ開拓生活に似合う馬なのだった。


 また,前述の通り,度々アメリカ大陸先住民アメリカ・インディアンが登場する。
 中でもオーセージ族と他部族のインディアン達の言い争いの場面は臨場感に溢れる。
 インディアン・テリトリー(インディアンの領土)に住む白人達を皆殺しにしようという意見が多勢を占めるインディアン達。その中で,オーセージ族の酋長ソルダト・ドゥ・チェーンが彼らを説得し白人を守ってくれたのだった。
 幾晩も続く話し合いの後,オーセージ族が,長い長い馬の隊列を組んでインガルス一家が住んでいた地域から去って行った場面も描かれている。この物語よりずっと後に,オーセージ族はオクラホマ州北部のオーセージ郡に居住地を確保した。

 物語はあくまで創作であって,本当のインガルス一家の体験がそっくりそのまま描かれているわけではない。しかし,アメリカの開拓史そのものとも思えるインガルス一家の物語の中でも,特に臨場感をもって白人開拓者と先住民との確執や政府の政策との狭間で起こった出来事を垣間見られる巻となっている。


 大草原に住み着いた数少ない隣人達も描かれている。
 家造りを手伝ってくれたエドワーズさん,「テネシー州から来たヤマネコだよ」とローラに自己紹介したエドワーズさん,ローラとメアリイのためにクリスマスプレゼントを運んでくれたエドワーズさんは,一家と懇意にしていた隣人でローラは彼を大好きだった。
 政府の命令でインディアン・テリトリーを去ることになった時の別れは辛かったが,後に思いがけず一家とエドワーズさんは再会することになる。
 ぜひ覚えておきたい登場人物だ。

 一家が「おこり熱」に伏せったときに助けてくれた黒人のタン先生。
 タン先生はインディアンを診るお医者さんだったということで,ローラにとって黒人に会うのは初めての経験だった。
 インガルス一家の物語でタン先生が再び現れることはないが,ローラはいつまでもタン先生のことを覚えていた。そして,それから30年くらい後,結婚して移住したミズーリ州マンスフィールドで,ローラはタン先生のことを街のイベントのスピーチで語ったのだった。これについてはローズ・シリーズで描かれている。
 タン先生は実在する人物で,お墓も残っている。


カンザス州モンゴメリ郡でのインガルス一家

 他の物語と同様に実際のインガルス一家の行動と物語は色々と異なっている。
 実際のインガルス一家は,ローラが生まれた翌年の1868年にウィスコンシン州ペピンの「大きな森」を離れ,ミズーリ州チャリトン郡へ移住。
 そして更にその翌年の1869年,カンザス州モンゴメリ郡のインディペンデンスから20kmの場所に移住し,1870年までの一年間,開拓小屋を建てて暮らした。ここが本書『大草原の小さな家』の舞台になった場所で,実際のローラは2歳~3歳だ。ローラは小さすぎてこの地での出来事をほとんど覚えておらず,物語を書くにあたって現地を訪れたり,アメリカ・インディアンについて改めて調べたりしたそうだ。

 なお,1870年にキャリーはここで生まれ,このあと一家は再び「大きな森」へ帰っている。


プラム・クリークの土手で―インガルス一家の物語〈3〉 (世界傑作童話シリーズ)

 ローラは7歳~8歳。
 オクラホマ州のインディアン・テリトリーから遙々旅をして,一家はミネソタ州のプラムが生る土地へ辿り着いた。


 父さんが買い取った家は,何と横穴小屋。
 西部へ移住したがっていたハンソンさんというドイツ語を話す北欧人から家と畑と牛を譲り受け,代わりに幌馬車とムスタング種の馬たちを譲ったのだった。
 クリークの土手に作られた横穴小屋は,綺麗に固めた白壁と床,天井は藁でできていて住み心地が良く,一家はここで一冬を過ごす。

 インディアン・テリトリーから一緒に旅をしてきたムスタングのペットとパティー,そして子馬のバニイは,ハンソンさんの牡牛二頭と交換され,新たな旅へ出発した。ローラは大好きな彼らを泣きそうになりながら見送った。インディアンのポニーであるムスタングたちには,定住して農耕生活を助けるより旅を続ける方が幸せなのだった。
 この物語を最初に読んだ小学生の時,物語の冒頭でペットとパティとバニイが行ってしまう場面があまりに悲しく,そのまま物語の中に引き込まれたものだ。


 これまでの物語で住んできた森の中や大草原とは異なり,近くにクリークがあって,水遊びをしたり魚をとったり,プラムの実をもいで干しプラムを作ったり,家族で水遊びを楽しんだりできる生活が始まった。
 お転婆なローラは父さんや母さんの言いつけを破って溺れそうになったり,暗い淵でヒルに吸い付かれ,水の怖さも体験する。

 また,ここで一家は初めての板作りで硝子窓がある家に住む。母さんの新しいピカピカの料理用ストーブ,真新しい清潔なカーテンの生き生きとした描写を読めば,その素晴らしい家に住んでみたくなること請け合いだ。
 初めて通う学校や,ローラの人生に強烈な印象を与える級友ネリー・オルソンとの出会い。初めて通う教会や優しいオルデン牧師との出会い。教会で過ごすクリスマス。町の近くで過ごしたこの巻では登場人物がぐっと増え,成長したローラの個性もハッキリしてくる。
 活発で冒険心溢れるローラだが,大きな森のクリスマスの日からずっと,プレゼントにもらった布人形のシャーロッテを心から大切にしている一面も持っていたりする。


 日本人には馴染みのない北アメリカ大陸の自然の話も印象的だ。
 特に秋が深まっても昼の暑さが続くイナゴ陽気(グラスホッパー・ウェザー)と,小麦が実る頃にやって来るイナゴの大群の話は,驚きを持って何度も読み返したものだ。この本ではイナゴと訳されているが,この時の昆虫はトビバッタという種類のバッタだったらしい。
 あっという間にやってくるミネソタの吹雪や,雪の中で3日間も生き延びる術を知っている父さんのことも忘れられないエピソードで,印象的な話が目白押しな巻だ。

ミネソタ州ウォルナット・グローブ時代のインガルス一家

 この巻は,テレビドラマでもお馴染みのウォルナット・グローブが舞台になっている。
 実際のインガルス一家は,キャリーが生まれたカンザス州のモンゴメリ郡を1871年に離れた後,ウィスコンシン州ペピンへ戻っている。ローラはここで初めての学校へ通い,1873年~1874年頃にウォルナット・グローブへ移住した。
 1867年生まれのローラはほぼ7歳で,この物語と同じ年齢だ。


 1875年,ウォルナット・グローブで一家にチャールズ・フレデリックという男の子が誕生しているが,この男の子は翌1876年,幼くして亡くなっており物語には登場しない。チャールズ・フレデリックが亡くなった1876年に,一家はウォルナット・グローブを離れ,アイオワ州バー・オークへ移住しホテルの経営を始めた。チャールズ・フレデリックについて,ローラはシリーズ本の中では一切ふれていない。
 グレイスは,1877年にバー・オークで生まれ,この年に一家は再びウォルナット・グローブへ戻った。トーマス・エジソンが蓄音機を発電した年のことだ。

 一家が暮らした横穴小屋は,一家が去った後も残っていて子供の遊び場になっていたが,クリークの氾濫などがあり1920年代には土に埋もれてしまった。今は土手の上に跡地を示す立て看板が立っているそうだ。

 強烈な印象を残すネリー・オルソンとは,後にローラは再会することになる。
 よく知られていることだと思うが,ネリーは実在した人物ではない。ローラはウォルナット・グローブでの級友2人,ネリー・オウエンズとジェネビーブ・マスターズをたして2で割った人物を作り上げ,ネリー・オルソンと名付けて物語に登場させたとのことだ。
 ローラはファンからよく受ける質問への定型の手紙を作成し,その中にネリー・オルソンのその後について「東部へ行き、結婚し、ルイジアナ州へ移りました。今は、その地に眠っています。」(『大草原の小さな家 ローラの世界』2000年/求龍堂)と書いている。モデルになったどちらの少女のその後のことなのだろう。


シルバー・レイクの岸辺で―インガルス一家の物語〈4〉 (世界傑作童話シリーズ)

 ローラは13歳。
 ローラと父さん以外のみんなが猩紅熱を煩い,それが原因でメアリイは失明してしまった。

 そんなどん底の一家を訪ねてきたのは,クワイナー家の物語(キャロライン・シリーズ)では,まだ小さかったチャールズの妹ドーシア。大きな森のカエデ蜜ダンスの時はまだ独身の若い娘で,ローラの前で,ルビィおばさんと一緒に長い髪をとかしつけ,コルセットを締めて素敵な服でお洒落をしていたドーシアおばさんだった。
 今ではドーシアおばさんは結婚していて,夫のハイおじさんの仕事を手伝ってくれる人を探して,兄であるチャールズ(父さん)を訪ねてきたのだった。


 ハイおじさんは西部に新しい鉄道を作る仕事をしていて,店の管理をする人を探していた。高い給料がもらえ,開拓農地を手に入れられると知ってチャールズはあっという間に行く決心をする。一家は住み慣れたミネソタのプラム・クリークを離れ,ダコタ・テリトリー(まだサウス・ダコタ州・ノース・ダコタ州になっていなかった)へ向かうことになった。


 ドーシアおばさんをはじめ,『シルバーレイクの岸辺で』では,『大きな森の小さな家』にでてきた親戚の人たちとの再会が相次ぐ。インガルス家(父さんの実家)もクワイナー家(母さんの実家)もフロンティア・ファミリーなのだ。

 ドーシアおばさんとハイおじさん,ハイおじさんの連れ子でローラの義理のいとこにあたるレナとジーン。彼らは,ダコタ・テリトリーの鉄道の仕事を終えると行き先も分からない西部へ旅立ってゆく。
 飯場で再会したヘンリーおじさん(キャロラインの兄)とポリーおばさん(チャールズの妹でキャロラインの親友)に,いとこのチャーリーとルイザの家族。彼らも,ウィスコンシンの農場を売って,幌馬車でモンタナへ旅立つ。

 ローラと父さんは本当は彼らと一緒にもっと西へ行きたくて仕方がないが,チャールズとキャロライン夫妻はダコタ・テリトリーに定住し,インガルス一家の旅はここで終わる。
 チャールズは結婚するときにキャロラインに誓ったのだ。子供達は学校に通わせきちんと教育を受けさせると。この遠い日の約束が一家をダコタ・テリトリーに留まらせたのだった。


 ローラが教師の職に就くことを否応ながらも決意するのもこの頃だ。
 教師が天職のようだったキャロラインは娘達の誰かを教師にしたいと思っており,メアリイはそのつもりだったが失明してしまった。ローラは母さんの希望を叶えるために自分が教師になるしかないと考え,教師になんてなりたくなかったのに決意するのだ。
 キャロラインは心から教師の職に就きたかったのに対し,ローラは違う。ローラがどれほど苦しかったかも感じられる。一家にはメアリイを盲人大学に進学させたいという目標もあり,ローラは教師になって稼がなければならないのだった。


 誰よりも早く良い農地を手に入れるために,一家は人が去った町の建設予定地に残り冬を越す。測量技師達の立派な家を借りての越冬だったが,誰もいない大草原のただ中で一家だけでの越冬の厳しさは想像を絶する。
 そして,春になると,新しくできる町に定住するための農地を申請する人々が次々とやってきて,あっというまに町が出来上がる。
 何もなかった場所にいきなり町が一つ出来上がっていくなどということは,人類史上アメリカでしか起こらなかったことだろう。


 一家は鉄道の工事場で働いていたボーストさん夫妻と知り合いになり,父さんはインディアン・テリトリーで良き隣人だった「テネシーのヤマネコ」ことエドワーズさんとも再会する。
 北米のこのあたりでは,「西へ三度緯度がかわるのは、南へ一度と同じ」と言うらしい。鳥たちもバッファローもいなくなったダコタ・テリトリーに新しくできる町,ドゥ・スメットの最初の入植者として一家は開拓農地の小屋に落ち着いたのだった。


ダコタ・テリトリーのデ・スメットでのインガルス一家

 1877年,アイオワ州バー・オークにてグレイスが生まれた後,インガルス一家は再びミネソタ州のウォルナット・グローブに戻る。 しかし,生活は楽にならなかった。1879年にはメアリイが病で失明するという悲しい出来事も起こった。物語では猩紅熱と書かれているが,本当の病名はわかっていないようだ。
 メアリイが失明した1879年に,一家はウォルナット・グローブを離れ,ダコタ・テリトリーへ移住した。同じ年にアルマンゾとロイヤルもデ・スメットにやって来る。

 1880年,ローラが13歳の年に一家は新しい開拓農地の家へ移り住む。ヘレン・ケラーが生まれた年のことだ。


農場の少年―インガルス一家の物語〈5〉 (世界傑作童話シリーズ)

 後にローラの夫となるアルマンゾ・ワイルダーの少年時代の物語。
 アルマンゾは9歳~10歳で,舞台はアルマンゾが生まれ育ったニューヨーク州北部のマローン。1866~1867年頃のことが描かれている。1867年生まれのローラが生まれた頃だ。

 ワイルダー家は,マローンの町一番の大きな農場を持つお金持ち。
 小屋のような家でフロンディア生活をしてきたインガルス家とは異なり,ワイルダー家の家は広く,農場には牛や馬,豚にニワトリなど多くの家畜がいたし,母さんは機織り機を持っていて,羊の毛を使って布を織ったり染色したりしていた。
 開拓者ではなく,定住した,しかもある程度裕福な家庭の生活が描かれている。


 牛や馬や豚の世話や,氷の切り出しや木の皮を使ったムチの作り方,牛の馴らし,二連橇の作り方や唐竿を使った脱穀,橇を使っての丸太運び等々,男の子の仕事の物語が中心。
 ローラと出会った頃のアルマンゾは,ローラが目を見張るほどの素晴らしい馬を御していたが,アルマンゾが子供の頃から如何に馬が好きであったかがよくわかる。

 裕福な家庭の子供であっても幼い頃から生きていくための様々な仕事を覚え一家を支えていく時代で,アルマンゾも学校へ通う傍ら家畜の世話のほか多くの農場の仕事をこなしていた。
 雪車などを作っていく場面は興味深くもあるが,実物を見たことがない複雑で立体的な道具のことは,文字を読むだけで想像するのは少々骨が折れる。

 家族で分担して行う家の大掃除,馬やバターを売る話,靴を作る話,また家族が各々博覧会へ出展し一家で博覧会を楽しむ話などは,インガルス一家では知り得ない当時の生活の一端だ。
 父さんがカップ&ソーサーのソーサーからお茶を飲むのをアルマンゾが恥ずかしがる話や,母さんが揚げるドーナツは丸いが,その頃の新しい物が好きな主婦は穴あきドーナツを作るという話など,時代の様子がわかるのも興味深い。


ワイルダー家のこと

 アルマンゾは,ニューヨーク州マローンから8kmほどのところにある『農場の少年』の舞台となっている家で,1857年2月に誕生した。ローラは1867年2月生まれなので,丁度10歳の年の差だ。

 ワイルダー家は1875年,アルマンゾが18歳の年にマローンを離れ,ミネソタ州南東部のスプリング・ヴァレーへ移住した。アルマンゾの両親は1898年までここに住み,最後はイライザ・ジェインが住むルイジアナ州クラウリーへ移住し,そこで亡くなった。
 ローラとアルマンゾはジフテリアを患ったあと,スプリング・ヴァレーでアルマンゾの両親とともに1年間暮らしている。またアルマンゾの両親は,ルイジアナ州へ移住する際,ミズーリ州マンスフィールドのアルマンゾとローラの家へ立ち寄った。

 ロイヤルとイライザ・ジェイン,そしてアルマンゾは, 1879年にダコタ・テリトリーのデ・スメット近郊に開拓の家を申請し移住した。


 『農場の少年』には兄のロイヤル,姉のイライザ・ジェインとアリスが登場する。
 ロイヤルとイライザ・ジェインはデ・スメットでインガルス家とも繋がりを持つため,岩波書店から出版されているローラの物語の後半で登場することになる。
 しかし,ローラはイライザ・ジェインとそりが合わず,どうやらアルマンゾもそうだったようで,イライザ・ジェインのことは「いばりや」と書かれている。

 アルマンゾには,他にローラ・アンという姉とパーリー・デイという弟があった。
 アルマンゾは,姉のローラと妻のローラを区別をするために,妻となったローラのことはミドルネームの「エリザベス」からとって「ベス」と呼んでいた。
 また,ローラはアルマンゾの弟パーリーについて書いていないが,娘のローズはイライザ・ジェインの家から高校へ通っていた頃にパーリーと会っていることが,ローズ・シリーズの『On the Banks of the Bayou (Little House Sequel)』に書かれている。

 ローラとはあまり仲良くなかったイライザ・ジェインだが,ローズはイライザ・ジェインが大好きだったらしい。
 女性一人で開拓農地を申請し,教師をしながら生計を立て,女性も選挙権を持つべきだと考えていたイライザ・ジェインは先進的な考えを持つ女性だったと思われる。同じく新しい時代の生き方を模索したローズとは気があったのだろう。

 蛇足かつ至って個人的な感想をひとつ。
 小さな家シリーズの登場人物の写真を一通り眺めて,一番の美人がイライザ・ジェインではないかと思う。同じく我が強いローラとは上手くいかなかったが,イライザ・ジェインは気が強く頑張り屋で知的な女性だったのだと思う。


インガルス家とワイルダー家の年表

1813年 ジェイムズ・メイソン・ワイルダー(アルマンゾの父)誕生
1821年 アンジェリーナ・アルビナ・デイ(アルマンゾの母)誕生
1836年 チャールズ・フィリップ・インガルス(父さん)誕生(1月10日)
1839年 キャロライン・レイク・クワイナー(母さん)誕生(12月12日)
1843年 ジェイムズ・ワイルダーとアンジェリーナ・デイ 結婚
1844年 ローラ・アン・ワイルダー(アルマンゾの姉)誕生
1847年 ロイヤル・ワイルダー(アルマンゾの兄)誕生
1850年 イライザ・ジェイン・ワイルダー(アルマンゾの姉)誕生
1853年 アリス・ワイルダー(アルマンゾの姉)誕生
1857年 アルマンゾ・ジェイムズ・ワイルダー誕生(2月13日)
1860年 キャロラインとチャールズ ウィスコンシン州コンコードで結婚(2月1日)
1865年 メアリイ(メアリー・アミーリア)誕生(1月10日)
1867年 ローラ(ローラ・エリザベス)誕生(2月7日)
1868年 インガルス家ミズーリ州へ移住
1869年 インガルス家カンザス州モンゴメリ郡へ移住
    パーリー・デイ・ワイルダー(アルマンゾの弟)誕生
1870年 キャリー(キャロライン・セレスティア)誕生(8月3日)
1871年 インガルス一家ウィスコンシン州ペピンへ戻る
1873年 インガルス一家ミネソタ州ウォルナット・グローブへ移住
1875年 フレディ(チャールズ・フレデリック)誕生(11月1日)
    ワイルダー家 ニューヨーク州からミネソタ州スプリング・ヴァレーへ移住
1876年 インガルス一家アイオワ州バー・オークへ移住
    フレディ 死去(0歳・8月27日)
1877年 グレイス(グレイス・パール)誕生(5月23日)
1878年 インガルス一家ミネソタ州ウォルナットへ戻る
1879年 メアリイ失明(14歳)
    インガルス一家ダコタ・テリトリーのデ・スメットへ移住
    ワイルダー家アルマンゾ・ロイヤル・イライザ デ・スメットへ移住
1881年 メアリイ・ローラ・キャリー初めての写真撮影
    メアリイ,アイオワ州の盲人大学へ入学
    イライザ・ジェイン・ワイルダー デ・スメットにて教職
1882年 ローラ教員免許取得 ブシー学校で教職
1884年 ローラとアルマンゾ婚約
1885年 ローラとアルマンゾ デ・スメットで結婚(8月25日)
1886年 ローズ誕生(12月5日)
1887年 インガルス一家 デ・スメットの最後の家へ引っ越し
1888年 ローラとアルマンゾ ジフテリアに罹る
1889年 ローラに男の子が誕生するがすぐに死去
    ローラとアルマンゾの家 焼失
    メアリイ 盲人大学卒業
    ダコタ・テリトリー改めサウス・ダコタ州誕生
1890年 ローラとアルマンゾ スプリング・ヴァレーでアルマンゾの両親と暮らす
1891年 ローラとアルマンゾ フロリダ州ウェストヴィルへ移住
1892年 ローラとアルマンゾ サウス・ダコタ州デ・スメットへ戻る
    アリス・ワイルダー 死去
1894年 ワイルダー家 定住の地となるミズーリ州マンスフィールドへ移住
1899年 ローラ・アン・ワイルダー 死去
1901年 グレイス デ・スメットにてネイサン・ダウと結婚(10月16日)
1902年 チャールズ 心臓の病にて死去(66歳・6月8日)
1903年 ローズ ルイジアナ州のイライザ・ジェインの元へ行き進学
1904年 ローズ ルイジアナ州クラウリーの高校を卒業
    ローズ ミズーリ州で電信技師の職に就く
1909年 ローズ サンフランシスコにてジレット・レインと結婚
1912年 キャリー ディヴィット・スウォンジーと結婚(8月1日)
1918年 ローズ 離婚
1924年 キャロライン 死去(84歳・4月20日)
1925年 ロイヤル・ワイルダー 死去
1928年 メアリイ サウス・ダコタ州キーストーンにて死去(63歳・10月18日)
1930年 イライザ・ジェイン 死去
1931年 ローラとアルマンゾ 車でデ・スメットを訪問
1932年 Little House in the Big Woods(大きな森の小さな家)出版
1933年 Farmer Boy(農場の少年)出版
1934年 パーリー・ワイルダー 死去
1935年 Little House on the Prairie(大草原の小さな家)出版
    ローラとアルマンゾ 結婚50周年
1937年 On the Banks of Plum Creek(プラム・クリークの土手で)出版
1939年 By the Shores of Silver Lake(シルバー・レイクの岸辺で)出版
    ローラとアルマンゾ デ・スメットへ旅行
1940年 The Long Winter(長い冬)出版
1941年 Little Town on the Prairie(大草原の小さな町)出版
    グレイス 死去(64歳・11月10日)
1943年 These Happy Golden Years(この楽しき日々)出版
1946年 キャリー 死去(75歳・6月2日)
1949年 アルマンゾ 死去(92歳・10月23日)
1953年 ガース・ウィリアムズ挿し絵の小さな家シリーズ8冊発行
1957年 ローラ 死去(90歳・2月10日)
1962年 On the Way Home(わが家への道―ローラの旅日記)出版
1968年 ローズ 死去(81歳・10月30日)
1971年 The First Four Years(はじめの四年間)出版


小さな家シリーズの覚え書き

マーサ・モース・シリーズ

小さな家が始まった場所(ローラの曽祖母さん)
 ― Martha Morse (1782)

Little House in the Highlands
Down to the Bonny Glen
The Far Side of the Loch
Beyond the Heather Hills


シャーロット・シリーズ

ボストンの小さな家の女の子(ローラのお祖母さん)
 ― Charlotte Tucker (1809)

Little House by Boston Bay
On Tide Mill Lane
The Road from Roxbury
Across the Puddingstone Dam


キャロライン・シリーズ(クワイナー家の物語

西部開拓時代の心(ローラのお母さん)
 ― Caroline Quiner (1839)

ブルックフィールドの小さな家  (マリア・D.ウィルクス作・土屋京子訳)
十字路の小さな町 (マリア・D.ウィルクス作・土屋京子訳)
森の小さな開拓地 (マリア・D.ウィルクス作・土屋京子訳)
コンコード・ヒルの上で (マリア・D.ウィルクス作・土屋京子訳)
せせらぎのむこうに (シーリアウィルキンズ作・土屋京子訳)
湖のほとりの小さな町 (シーリアウィルキンズ作・土屋京子訳)
二人の小さな家 (シーリア・ウィルキンズ作・土屋京子訳)
福音館書店

Little House in Brookfield (The Caroline Years, Bk 1)
Little Town at the Crossroads (Little House Prequel)
Little Clearing in the Woods: Little House, The Caroline Years
On Top of Concord Hill (Little House: The Caroline Years)
Across the Rolling River (Little House Prequel)
Little City by the Lake (Little House Prequel)
A Little House of Their Own (Little House Prequel)


ローラ・シリーズ(インガルス一家の物語)

アメリカの元祖パイオニア・ガール
 ― Laura Ingalls (1867)

大きな森の小さな家
大草原の小さな家
プラム・クリークの土手で 
シルバー・レイクの岸辺で 
農場の少年
(以上,福音館書店から。ローラ・インガルス・ワイルダー 著・ガース・ウィリアムズ絵・恩地三保子訳。講談社青い鳥文庫および角川つばさ文庫からも出版されている。)

長い冬(上下)
大草原の小さな町
この楽しき日々
はじめの四年間
わが家への道
(以上,岩波少年文庫から。ローラ・インガルス・ワイルダー 著・ガース・ウィリアムズ絵・谷口由美子訳。)

Little House in the Big Woods (1932)
Farmer Boy (1933)?about Almanzo Wilder growing up in New York
Little House on the Prairie (1935)
On the Banks of Plum Creek (1937)
By the Shores of Silver Lake (1939)
The Long Winter (1940)
Little Town on the Prairie (1941)
These Happy Golden Years (1943)


ローズ・シリーズ

新しい時代のパイオニア(ローラの娘)
 ― Rose Wilder (1886)

ロッキーリッジの小さな家 (ロジャー・リー・マクブライド作・谷口由美子訳)
オウザークの小さな農場 (ロジャー・リー・マクブライド作・こだまともこ訳)
大きな赤いリンゴの地 (ロジャー・リー・マクブライド作・谷口由美子訳)
丘のむこうの小さな町へ (ロジャー・リー・マクブライド作・こだまともこ訳)
オウザークの小さな町 (ロジャー・リー・マクブライド作・谷口由美子訳)
ロッキーリッジの新しい夜明け (ロジャー・リー・マクブライド作・こだまともこ訳)
講談社

Little House on Rocky Ridge (Little House Sequel)
Little Farm in the Ozarks (Little House, The Rocky Ridge Years)
In the Land of the Big Red Apple (Little House Sequel)
On the Other Side of the Hill (Little House Sequel)
Little Town in the Ozarks (Little House Sequel)
New Dawn on Rocky Ridge (Little House Sequel)
On the Banks of the Bayou (Little House Sequel)
Bachelor Girl (Little House Sequel)


参考

  • 『大草原の小さな家…ローラのふるさとを訪ねて…』(1998年/求龍堂グラフィックス)
    文 ウィリアム・T・アンダーソン
    写真 レスリー・A・ケリー
    構成・訳 谷口由美子
  • 『大草原の小さな家 ローラの世界』(2000年/求龍堂)
    キャロリン・ストーム・コリンズ&クリスティーナ・ワイス・エリクソン/著
    デボラ・メイズ&ガース・ウィリアムズ/絵
    清水奈緒子/訳
  • オーセージ郡 (オクラホマ州) – Wikipedia

小さな家シリーズの Index


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