はいからさんが通る

数十年ぶりに本棚から引っ張り出して読んでみた。
「花の東京大ロマン」
この副題にふさわしい希望と夢があふれる恋愛漫画だ。

かげろう ゆらゆら 小石川
ハーフブーツに えび茶のはかま
頭のリボンも ひらひらと
これで きまりの 女学生
わたくし 花の 十七さい

『はいからさんが通る』1巻

物語の冒頭で、
ヒロインの花村紅緒は17歳の女学生。
時は大正7年。

KCフレンド はいからさんが通る

『週刊少女フレンド』連載は1975年~1977年。
中学生だった私たちは学校で回し読みしていた。
「はいからさん」は「キャンディ」()と共に
1970年代後半の少女たちを魅了する双璧だった。

子供すぎた私たちの興味は
「紅緒さんと少尉みたいな恋がしたい!」ではく
「大人になったら一緒に酒乱しようね!」の方。

「平塚らいてう」を知ったのも
シベリア出兵を知ったのもこの漫画。
「ゴンドラの唄」の歌詞を覚えたのもそう。

何故か「浪漫」とセットで語られる大正時代。
紅緒さんが生きた時代の流行歌や出来事をなぞりつつ
今や大正と同じく昔になった昭和の時代
連載中だったあの頃の流行語などを懐かしむ。

けれど懐古主義だけには終わらないのが
こういった不朽の名作だろう。

どんな困難に出遭っても
クヨクヨせずに前向きに突っ走る紅緒さん。
婚約者を失っても冤罪で監獄にぶち込まれても
紅緒さんは決して暗い顔をしない。

とにかく人生シリアスに考えこんでも
どうなるものでもないし……

『はいからさんが通る』5巻

そう、そうだよね!

「キャンディ・キャンディ」
 『なかよし』連載 1975年~1979年
 原作:水木杏子/作画:いがらしゆみこ

『はいからさんが通る』は
1978年~1979年に一度アニメ化されて放映された。

しかし最近になって劇場アニメが製作されている。
大和和紀画業50周年イベントの一環だそうで
2017年と2018年に各々前編と後編が公開された。

視聴してみたが、
原作も最近のアニメもよく知っている私から見て
たいへんよくできた作品だった。
デザインは原作の雰囲気を壊さずにアレンジされており
東京の風景は当時の資料を基にりっかり描かれている。

こちらは前編・後編合わせたBlu-rayBOXが発売済み。
オンデマンド配信もあるので、
dアニメストアその他で気軽に見ることもできる。

世話やきキツネの仙狐さん

コミック配信サイト『コミックNewtype』にて2017年10月から連載中。
2019年4月~6月にアニメ化作品が放映された。

ブラック企業で連日終電ギリギリ、
心も体もボロボロになっていく中野のもとへ
神使の狐、仙狐さんが世話をしにやってくる。

800年の時を生きてきた仙狐さんだが、
狐の耳ともふもふの尻尾を持った幼女の姿。

仙狐さんの同僚のシロ。
仙狐さんの上司の夜空(そら)。
様々なタイプの狐さんが目の保養になることは勿論だが、
仙狐さんの家庭的な雰囲気に癒やされる。

そして忙しい日々に追われ見失ったもの。
何か大切なもの。
人が日々を幸せに生きるために必要なもの。
生き物として当然であるはずの常識。
そういったものを思い出させてくれる。

この作品は「コメディ」に分類されるようだが、
私にはとても社会派作品に思えた。

そう、人は何のために生きるのか?
生きているのか?
青臭いけれど、これは永遠のテーマではないか。

日常に追われることが当然になって、
失ってしまった「あそび」の時間。
そして日常を営むための基本だった時間。

夕刻には帰宅し夕食を美味しく食べる。
必要なだけの睡眠を取る。
病気の日は家で休む。
楽しく遊べる休日を確保する。
悪天候が極まった日は出かけない。
布団を干したり家事をしたり自分のねぐらを整える。

みんな生物として普通のことなのに
それができない日々を送る人は珍しくない筈だ。
文明が進んで便利になっているのに、
何故か人の自由な時間は増えていない。

仙狐さんは便利さを否定しないし、
不条理な日常を非難もしない。
ただ受け入れて、
不思議に思ったり同情したり、
驚いたり楽しんだりする。

☆☆☆

「存分に甘やかしてくれよう!」

世話やきキツネの仙狐さん (1)

☆☆☆

いつのまにか仙狐さんに甘やかされ、
仙狐さんの温かな尻尾に包まれているような、
そんな作品だと思う。
癒やし成分の補給に仙狐さん!

稲荷神社は日本全国に32000社。
近所のどこかには必ずあるはずだ。
赤い鳥居に神使の狐、珍しくない光景だ。
仙狐さんのような存在がいたとしても
少しも不思議ではないよねと思う。

世話やきキツネの仙狐さん – Webで漫画が無料で読める!コミックNewtype