マルタの鷹

本の概要

  • ダシール・ハメット (著), 宇野利泰 (翻訳)
  • ASIN ‏ : ‎ B00AQRYS3C(Amazonのページへ
  • 出版社 ‏ : ‎ グーテンベルク21 (2012/12/19)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2012/12/19
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 本の長さ ‏ : ‎ 340ページ

誘拐された妹を取り戻してほしいと一人の女から依頼を受けたサム・スペードは、女の希望どおりに相棒のマイルズに一人の男の跡をつけさせる。だが、マイルズは射殺され、肝心の男も死体となって発見される。嫌疑をかけられたスペードは依頼主の女を追う…やがて明らかになる「マルタの鷹」と呼ばれる謎の彫像をめぐる血で血を洗う争奪戦…ハードボイルドの金字塔!

Amazonの作品説明より

ハードボイルド金字塔

 ハードボイルドの金字塔,「史上最高のミステリー小説100冊」ではシャーロック・ホームズシリーズに続いて総合2位。非常に有名な作品らしいということで読んでみた。ちなみにミステリーに興味がないためシャーロックホームズシリーズも読んだことがない。

 「ハードボイルド」という言葉もよく聞くが,実のところ意味を知らない。
 改めて調べてみると,Wikipediaには「文芸用語としては、暴力的・反道徳的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体をいう。」と書かれていた。怖いことが淡々と書かれているということか?

「ハードボイルド」は元来、ゆで卵などが固くゆでられた状態を指す。転じて感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的・肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す。ミステリの分野では、従来あった思索型の探偵に対して、行動的でタフな性格の探偵を登場させ、そういった探偵役の行動を描くことを主眼とした作風を表す用語として定着した。
(ハードボイルド – Wikipedia)

 確かに主人公のスペードは,行動的であり論理的であり妥協せず淡々と目的を達成する人物で,この説明に合致する。


感想

 ミステリーはほとんど読んだことがないが,読んでみると面白いと思う。
 二つの,後半では三つの殺人事件の犯人特定と,依頼者たちが追い求めている鷹の彫像の謎が解き明かすべき謎となっている。

 この作品は兎に角登場人物が多い。しかも,場面によって会話によって,姓だったり名だったり,略称だったり愛称だったりで,同一人物を把握するのも私には難しかった。
 仕方が無いので本の最初にあった人物紹介を事前に書き取り,誰か登場する度に情報を書き加え,分からない人物が出て来ると照合してどの人だか確認するという方法で読み進んだ。それでも結局「フィル」なる人物は誰だったかわからないままだ。
 登場人物の把握が難しいことが物語の理解を妨げてはいたが,それでも続きと結末が気になって最後まで読み通した。もう一度くらい読まないと良く解らないのかもしれない。


登場人物

  • サミュエル・スペード 私立探偵。顎の先端も口の形も髪の生え際もVの字。目はイエローグレーで髪は薄茶色。30代で陽気な金髪の悪魔といったいでたち。親しい人からはサムと呼ばれる。
  • エフィ・ペリン スペードの秘書。背が高く日焼けしたような肌,茶色の目に男の子のような顔立ち。
  • マイルズ・アーチャー スペードの共同経営者。中背で体格がよく赤ら顔の40代。
  • アイヴァ アーチャーの妻。スペードと結婚したがっている。
  • フィル 第11章「肥った男」のアイヴァのシーンに登場。スペードとアイヴァの関係を疑っており,スペードがアイヴァと結婚するためにアーチャーを殺したのではと警察に密告する。誰?小説を読むと確かに登場するが,ネット検索では存在しないと言われる…。
  • フロイド・サーズビー 謎の男。35歳で長身,黒い肌と黒い髪,太い眉を持ち乱暴な印象。目は青みを帯びた淡いグレーで顎に傷跡があるスポーツマンタイプ。
  • ジョエル・カイロ 中近東のレヴァント人。中肉中背で細身の骨格,肌は浅黒く頭髪は漆黒。多数の宝石を身につけている。ある美術品,黒い鳥の彫像を取り戻すためにスペードの事務所を訪れたと話す。ベルヴィディア・ホテルに滞在。
    レヴァントは東部地中海沿岸地方のことで,トルコ・シリア・レバノン・イスラエル・エジプトを含む地域。
  • ブリジット・オショーニシー(ミス・ワンダリー/ミス・ルブラン) 事件の依頼者。コバルトブルーの目をした美人。25歳? 長身で暗赤色の巻き毛。最初にスペードの事務所を訪ねた時は,サーズビーに連れ去られた17歳の妹コリーンを連れ戻すためにニューヨークからサンフランシスコへやってきたと話す。
  • ミスター・フリード 依頼者が宿泊していたセント・マーク・ホテルのロビーに机を構える黒い服を着た年齢不詳の小肥りの男。ホテルの支配人?
  • ルーク ジョエル・カイロが滞在するヴェルヴィディア・ホテルの職員(支配人?)。中肉中背で血色のよくない丸顔だが,引き締まった体躯に黒い服をきちんと着ている。
  • カスパー・グトマン 鷹(ファルコン)をねらう男。アレグザンドリア・ホテルに滞在。膨れ上がったピンク色の球根でできたようなぶよぶよの肥った体つきをしている。
  • ウィルマー・クック グトマンの子分。チンピラやくざの若者。銃の腕前は相当なもの。
  • シド・ワイズ スペードがアイヴァに紹介した弁護士。
  • トム・ポルハウス 部長刑事。ビール樽のような腹,鋭い目と暑い唇を持つ長身の男。
  • ダンディ 警部補。引き締まった体つきの小柄な男。髪と口髭は半分白い。5ドル金貨をネクタイピンにしており,襟にどこかの秘密結社のバッジをつけている。
  • シリング 巡回巡査。撃たれたアーチャーを発見した。
  • ケミドフ 鷹を持っているロシア人。
  • ブライアン 地方検事。40代半ばの中肉中背金髪男。
  • ディクシー・モナハン サーズビーがボディガードをしていた男。博奕による二十万ドルの負けが払えず土地を売った。

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本の記録(2025-09)

 今月から新しくサブスク契約したU-NEXT(ユーネクスト)で無料で読める本がけっこうあることに気づき,しかもカテゴリ別の表示があるので Amazon の Kindle Unlimitedより興味深い本を見つけやすい。試しに絵本を読んでみた。今後も利用していきたい。
 今月はテクノ封建制とマルタの鷹に時間がかかり読み終えた冊数は少なめ。


9月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:744
ナイス数:14

おつきさまのおさんぽおつきさまのおさんぽ感想
 クレーンにひっかかって地球に下りてきたお月様。街を散歩し,遊園地で遊んで,車たちとお話し,海の上を大行進。海の底の鯨の背中でお魚たちと遊んでお空へ帰る。絵は可愛らしく,小さなところまで描き込まれているのでじっくり見れば見るほどなお楽しい。
 最後のページに物語の中のできごと探しがあり,Webで答合わせができるようになっているのが最近風だった。
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 著者のヤニス・バルファキスはギリシャの政治家・経済学者。2008年の金融危機のあと,資本主義社会は崩壊し,現在は人の心と市場を奪い取る怪物的なクラウドベースの資本に牛耳られるテクノ封建制の時代の入ったという。金融危機で社会が崩壊するのを防ぐために中央銀行が無尽蔵に提供した資金でクラウド領主の帝国が誕生し,そこで人間はもはや自己の分身さえ所有していない。労働者は就業時間中はクラウド・プロレタリアートになり,それ以外の時間はクラウド農奴になっているという。農奴は自己のデータの集積によってクラウドに繋がれていて,それらを見捨てて他所のクラウドへ移動するのも難しい。

 クラウド資本に奪われた脳内資産を奪い返すために,人間が自分の心と頭を再び所有するために,クラウド・プロレタリアートであり,クラウド農奴である私たちは,クラウド資本を集合的に所有しなければならない。領主の行動誘導の手段によって生産する今日から抜け出して,協働と解放の手段として生産するためにはそれしか道がない。著者はそのように説く。

 正直言って経済用語にテクノロジー用語,政治用語,加えてギリシャ神話の概念までも持ち込まれていて難しかった!
読了日:09月14日 著者:ヤニス・バルファキス,斎藤幸平

マルタの鷹マルタの鷹感想
 「ハードボイルドの金字塔」として名高く,「史上最高のミステリー小説100冊」ではシャーロック・ホームズシリーズに続いて総合2位を獲得している作品。ハードボイルドって何?ということも知らなかったので,非常に有名な作品らしい本書を読んでみることにした。

 ミステリーはほとんど読んだことがないが,読んでみると面白いと思う。二つの,後半では三つの殺人事件の犯人特定と,依頼者たちが追い求めている鷹の彫像の謎が解き明かすべき謎となっている。兎に角登場人物が多く物語の理解を妨げてはいたが,それでも続きと結末が気になって最後まで読み通した。もう一度くらい読まないと良く解らないのかもしれない。登場人物については,後に再読するときのためにブログにまとめておこうと思う。
読了日:09月25日 著者:ダシール・ハメット


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