早春の六義園

 紅葉のライトアップや枝垂れ桜で脚光を浴びる六義園だが,それ以外の季節は静かにのんびりと散歩ができる静かな庭園だ。実のところ紅葉する木はそんなに多くないし,桜も有名な枝垂れ桜があるだけで,桜の木が沢山あるわけでもない。

 六義園は,第5代将軍徳川綱吉の大老だった柳沢吉保(やなぎさわよしやす,1659-1714)が造園した和歌の庭園だ。今は無くなってしまったが,以前は紀貫之が書いた『古今和歌集』の仮名序に由来を持つ「心種(しんしゅ)の松」という名所もあった。


大和歌は、人の心を種として、万の言の葉とぞなれにける

古今和歌集 紀貫之

六義園(2023-02-15)
六義園(2023-02-15)

 若葉が力を溜めて弾き出ようと時を伺う早春の六義園はクマザサが美しい。
 訪れる人が少ないこの季節には様々なメンテナンスが行われるようで,この日は水路への水が遮断されていた。ベンチなども取り除かれ,入れる場所もいつもと異なっていた。

 度々訪れると,そんな小さな違いも楽しく思える。

六義園(2023-02-15)
六義園(2023-02-15)

 日本庭園だから梅があるかと思いきや,六義園には意外と梅の木も少ない。
 正門近くの宜春亭(ぎしゅんてい)の横に紅梅が咲き誇っているが,ここは予約が必要な有料茶室で一般の入場者は近くへ行くことができない。

 正門から大泉水(六義園の中央にある大きな池)の横を北へ歩き,渡月橋を渡ったところに数本の梅の木がある。ここが六義園で唯一,梅の花を楽しめる場所だろうか。2月の中旬,丁度白梅が見頃だった。

六義園(2023-02-15)
六義園(2023-02-15)
六義園(2023-02-15)
六義園(2023-02-15)
六義園(2023-02-15)
六義園(2023-02-15)

 園内で一番高い展望所,藤代峠に向かうツツジの階段を上ってゆくと,気の早いツツジの花が数輪,既に咲き始めていた。春は近い。

六義園(2023-02-15)
六義園(2023-02-15)

 枝垂れ桜と休憩所兼売店の間にある土蔵。
 遠くから緑に囲まれた様子を眺めることしかできない蔵だが,この日は扉の近くまで見学できるようになっていた。
 緑が生い茂り,この土蔵が「森の中の一軒家」のような風情になる季節がもうすぐやってくる。楽しみだ。

六義園(2023-02-15)
六義園(2023-02-15)

物語が生まれる坂

 豊島区高田に位置するのぞき坂。
 都電荒川線の鬼子母神前駅,東京メトロ副都心線の雑司ヶ谷駅のすぐ近くだ。

 のぞき坂は,関口台地と神田川の氾濫原を南北につなぐ急な坂道。自動車が通れる坂としては,都内有数の傾斜を誇るらしい。

 このダイナミックな風景は如何にもドラマティックで,確かに物語の舞台に相応しい。

のぞき坂(2022-03-20)
のぞき坂(2022-03-20)

 先ず思い浮かぶのはアニメ『冴えない彼女の育てかた』。
 主人公とヒロインの加藤恵が出会う印象的な場所が,のぞき坂を舞台に描かれていた。ヒロインがこの坂の上に立つ場面は,坂道ごとフィギュア化されている。

ねんどろいど819 加藤恵 ヒロイン服Ver. (のぞき坂の上にいるヒロインのフィギュア)
ねんどろいど819 加藤恵 ヒロイン服Ver.
(のぞき坂の上にいるヒロインのフィギュア)

 アニメ『偽物語』および劇場版アニメ『天気の子』でもこの坂道のシーンが描かれており,他にも舞台となっている作品が幾つかあるらしい。

 アニメ聖地巡りならずとも,坂の上からの景色は一見に値すると思う。近くを訪れたら用もなく訪れ歩いてみたくなる。

地図:のぞき坂『天気の子』ロケ地
地図:のぞき坂
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『天気の子』の田端 – かわゆら
緑色の新宿駅 – かわゆら