お椀の上の里地里山

 東京大学あたりの本郷通りは散歩が楽しい場所だ。
 夏は街路樹が落とす木陰が涼しげだし,年末になると木々の紅葉が華やかだ。
 周辺には学生が利用しそうな古本屋さんがあったり,金物屋さんや石材屋さんなど昔ながらの露店がぽつぽつ並んでいる。

 いつもキョロキョロと風景を眺め,立ち止まったり撮ったりして歩いているはずなのに,歩く度に新しい発見があるから不思議なことだ。

本郷通りにて(2023-12-25)
本郷通りにて(2023-12-25)

 この日の一番の収穫はこの看板。
 稲穂に囲まれたお茶碗の上に田んぼと里山が乗っかっていて,お日様が陽気に里地里山の上に輝き,文字の上にちょこんと留まったカワセミが川のお魚を狙っている。
 すごく可愛い。なるほどお米屋さんなのか。
 そして文字をよく見ると「大正五年創業」と書かれている。すっごい老舗ではないか!

本郷通りにて(2023-12-25)
本郷通りにて(2023-12-25)

 こんなお店が何気なく残って普通に営業しているのが東京都心だと思う。
 江戸っ子の活気や息づかいが町のそこここに溢れて伝わってくる。

 本郷通りを歩く楽しみがまた一つ増えた。

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夕暮れの団子坂

 千代田線千駄木駅から南北線本駒込駅へ,西へ向かって上って行く団子坂。
 藍染川が流れる坂下と本郷台地を結ぶ坂道だ。

 夕暮れ時に坂を上ると正面の空が夕焼けで染まり美しい。季節によっては低い太陽を目指して坂を上ることになり,これもまた絵になる。

 今の季節は日没が早いので16時を過ぎると既に暗く,寒々とした空に微かに残った夕焼けの名残に心惹かれた。

団子坂(2023-12-20 16:16)
団子坂(2023-12-20 16:16)

 団子坂の途中には森鴎外が30年暮らした観潮楼跡(森鴎外記念館)があり,この坂道は森鴎外の『青年』や夏目漱石の『三四郎』にも登場する。
 これらの小説に描かれた明治時代,団子坂では秋になると菊人形が並んでいたそうだ。今ではその片鱗を窺うこともできないが,団子坂の菊人形はかなり有名な名所だったらしい。

団子坂(2023-12-20 16:19)
大観音通りの街灯(2023-12-20 16:19)

 既に街灯に灯が点っている。
 街灯というものは通りによって趣向が凝らされており,その道の顔であると常々思う。
 道沿いに駒込大観音(光源寺)があるためこの道は「大観音通り」と呼ばれているが,街灯の横に「大観音通り商栄会」の幟がはためいている。昔ながらの個人商店が並ぶ商店街だ。
 この街灯は長い間この商店街を盛り立ててきたのだろうなどと思いながら街灯を見上げた。

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