キューガーデンズの孔雀

 王立植物園キュー・ガーデンズの熱帯雨林温室パームハウス。
 ガイドブックでキュー・ガーデンズの紹介を見れば,大抵この温室の写真が載っている。言わばキュー・ガーデンズの顔とも言える施設だ。

 1848年に完成したこの温室は,船を逆さにしたようなデザインが特徴。ヴィクトリア朝様式のデザインで,熱帯雨林の環境を整えている。
 内部の熱を逃がさないように設計された美しいカーブを描くガラスの壁は,ハイドパークの設計で知られる建築家デシマス・バートン氏によるものらしい。
 とにかくとても絵になる温室だ。

キュー・ガーデンズ パーム・ハウス前(2008-05-23)
キュー・ガーデンズ パーム・ハウス前(2008-05-23)

 この堂々たる温室の前の道路のど真ん中に,1羽の孔雀が座り込んでいた。
 堂々たる様子で我が物顔の孔雀。おそらくここで飼われていて植物園内で好き勝手に過ごしているのだろう。

 珍しかったのでしばらく孔雀を眺めていた。
 すると,寛いだ様子だった孔雀はふとパーム・ハウスの方に視線を移し,おもむろに立ち上がってパーム・ハウスの庭から離れるように歩き始めた。丁度,小さな女の子2人とそのお母さん2人がこちらへ向かっており,どうやら孔雀は子供から逃げたかったらしい。

 案の定,孔雀を見つけた女の子たちは,怖々と,しかし興味津々といった感じで追いかけ始める。
 それに対し,孔雀は悠々とした様子で通路横のラベンダーの茂みの中へ入り込み,とことこ歩いて行ってしまった。孔雀は人が入れない場所をよく承知しているのだ。

 ちょっと面白い光景だった。

誰もいない駅には物語がある

 
 ゴールデンウィークのただ中の,都営三田線 内幸町駅。

 深夜とか早朝ではない。13時半頃の写真だ。
 そもそも常日頃,休日平日・朝昼晩,常に混雑している都営三田線も珍しく空いていた。

 世間が休みになると東京は混雑している所と閑散としているところに真っ二つに分かれるが,コロナ禍で一時期そんな状況も緩和されたような印象だった。それが元に戻った感じ。この駅で降りたことは何度もあるが,こんなに誰もいない様子は初めて見た。

 政府関係機関や大手企業のオフィスなどが近くに多いこの駅は,休暇中は閑散とする駅なのだろう。

都営三田線 内幸町駅(2023-05-04)
都営三田線 内幸町駅(2023-05-04)

 人がいない駅には何か独特の風情がある。透けて見える物語があると思う。
 新しい駅なら新しい駅なりの,古い駅なら古い駅なりの。

 人がいない空っぽな駅だからこそ,物語が入り込む余地があるのだろう。

都営三田線 内幸町駅(2023-05-04)
都営三田線 内幸町駅(2023-05-04)
都営三田線 内幸町駅(2023-05-04)
都営三田線 内幸町駅(2023-05-04)

 私にだけ見える駅の物語を残したくて,シャッターを切る。