本の記録(2023-04)

 Webで『源氏物語』を読みながら,大和和紀『あさきゆめみし』を読み,更に同じ箇所を田辺聖子『絵草紙 源氏物語』を読むという三段階構造で源氏物語を読む月だった。更に2009年のテレビアニメ『源氏物語千年紀 Genji』も視聴し,イメージを補った。
 どっぷり『源氏物語』に浸った1ヶ月だったが,まだまだ物語を把握するには足りない。与謝野晶子の現代訳『源氏物語』が良さげなので,そのうち読んでみようと思う。長い物語で時間がかかりすぎるのが難点。

 現在は『すらすら読める徒然草』(中野孝次著)を読んでいるが,『徒然草』に全く親しんで来なかったため難解で,何度も読み返さなければならないので遅々として進まず。


4月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2613
ナイス数:40

あさきゆめみし(2) (講談社漫画文庫)あさきゆめみし(2) (講談社漫画文庫)感想
 葵祭とそれに続く葵の上の出産&死,紫の君の裳着の式,六条御息所の伊勢下り,桐壺院の崩御,藤壺の中宮の出家,朧月夜との密通,麗景殿の妹である橘の姫君,花散里との出会い,明石での謹慎と帰京,光る君の兄である朱雀帝の退位と冷泉帝の即位,六条御息所の死と娘の斎宮の入内(梅壺の女御),花散里のもとへ向かうはずが末摘花の家に辿り着く源氏の君。
読了日:04月03日 著者:大和 和紀

あさきゆめみし(3) (講談社漫画文庫)あさきゆめみし(3) (講談社漫画文庫)感想
 源氏の君は六条の御息所の娘をひきとり梅壷の女御として入内させる。明石の姫君は紫の上が育てることに。藤壺の女院の他界。夕霧の元服。花散里を母として九条の源氏の家で暮らすことになるが,身分や雲居の雁との恋愛に苦しむ。また紫の上を見てあまりの美しさに悩む。源氏の君の従姉妹の槿の君。彼女は源氏の君を心憎からず思っているが恋人にはならない筋が通った女性。夕顔の娘が源氏の君に発見される。父親に引き合わせることもせず養女にし,そのくせ言い寄る源氏の君…まじクソ男。源氏の君が実父と知った冷泉帝は梅壷の女御を中宮とする。
読了日:04月09日 著者:大和 和紀

あさきゆめみし(4) (講談社漫画文庫)あさきゆめみし(4) (講談社漫画文庫)感想
 玉鬘は結婚し幸せな家庭を築く。幼い頃からの約束を叶えた夕霧と雲居雁はこの物語全体で一番の感動シーンかも。明石の姫君は裳着を終え入内。明石の御方が実母と知る。朱雀院の出家を良いことに朧月夜を訪れる源氏の君だが,もう呆れる気にもならない。朱雀院の娘の三の宮を藤壺の宮の面影があるかもと受け入れたこともしかり。そのくせ出家したいと願う紫の上の願いは聞き入れない。紫の上は六条御息所の死霊に取り憑かれ生死を彷徨い,三の宮は柏木の子を身ごもる。三の宮に執着する柏木は藤壺の宮に執着する光る君とそっくりなのだった。
読了日:04月14日 著者:大和 和紀

あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫)あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫)感想
 六条の院は自分も同じ事をしたと自覚しながら柏木と三の宮を許せない。柏木は夕霧に六条の院への取りなしと二の宮のことを頼んでみまかる。二の宮を見舞ううちに今度は夕霧が二の宮に恋煩い。相手の迷惑も考えずに突き進む。思えば藤壺の宮も空蝉も玉鬘も三の宮も二の宮も望まないのに押し入られた相手に身を任せるしかなかった。当時の女性は男性に目をつけられたら逃れる手段がなかったのか。紫式部はそんな苦しみを背負って生きていく女性達を描きたかったのだろうか。「女はなにによって生きるよろこびを味わえるというのか」と紫の上。
読了日:04月16日 著者:大和 和紀

絵草紙 源氏物語 (角川文庫 (5594))絵草紙 源氏物語 (角川文庫 (5594))感想
 再読。初読は1996年。
 第一部『桐壺』〜『藤裏葉』,第二部『若菜上』〜『雲隠』を,各々の章2〜4ページほどの文章に豪華な浮世絵風のカラー挿絵を組み合わせ,絵草紙風に構成されている。一応『源氏物語』を知らなくても読めるようになっているが,登場人物が多く馴染めない古代の用語も出てくるため,原作の知識が多ければ多いほど楽しめる本だと思う。前回読んだ時よりも平安時代の知識が増えていた分だけ今回の方がより理解でき印象にも残った。
読了日:04月17日 著者:田辺 聖子

あさきゆめみし(6) (講談社漫画文庫)あさきゆめみし(6) (講談社漫画文庫)感想
 世間的には光源氏の子である柏木と朱雀帝女三の宮の息子,薰が主人公。薰は14歳〜26歳。薰と仲の良い匂宮は,今生天皇と明石の中宮の三の宮。次期春宮。子供の頃に慕っていた紫の上から二条院を譲り受け梅の木を見守っている。かつての光源氏と頭中将を彷彿とさせる美しい2人だが,薰は内省的,匂宮は一見派手だが真面目な若者。自分の出生に疑問を持っていた薰は,宇治で隠遁生活を送る桐壺帝八の宮と2人の娘,大君と中の君と知り合いになる。宇治の娘達に惹かれていく2人だが,匂宮は夕霧の六の君と,薰には今生帝二の宮との縁談が。
読了日:04月19日 著者:大和 和紀

あさきゆめみし(7) (講談社漫画文庫)あさきゆめみし(7) (講談社漫画文庫)感想
 中の君の母違いの妹,浮舟の物語。薰の大将に見つけ出されて保護された浮舟だったが,匂宮に見られてしまい,宇治に逃げたものの探し出されてしまう。感情にまかせて浮舟を自分のものにしようとする匂宮と,誠実に温かく世話をしてくれる薰の大将との間でどうすることもできない浮舟は死ぬしかないと思い詰める。浮舟がいなくなって,薰は大君の身代わりではなく浮舟という人を愛していたことに気づく。浮舟は出家し,薰との再会を拒否。薰は仏の道を目指して入った宇治の山で恋に迷った自分を見出し我に返る…。
読了日:04月21日 著者:大和 和紀


読書メーター

新緑の六義園にて

 枝垂れ桜の頃はあんなに大勢の人が訪れていた六義園は,注目される季節が終わった途端,秋の紅葉ライトアップまで静かになる。桜も紅葉も,この美しい新緑や寒さを耐える冬の姿を見てこそ心から感動できるものではないのだろうか。


花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは。

徒然草 第百三十七段(吉田兼好)

 『徒然草』第百三十七段で兼好法師が書いたこの言葉の通りだ。令和の世になっても,人は盛りの花のみを好む。時代を経ても人間の本質とは変わらないものだ。

六義園(2023-04-23)
六義園(2023-04-23)
六義園(2023-04-23)
六義園(2023-04-23)

 目が覚めるような新緑は見る人の心を澄み渡らせてくれる。
 それほどに美しい。

 よく手入れされた六義園のクマザサが風になびいて波になる様子は「いとをかし」とはこのことだと思わされる。

六義園にてコミスジ(2023-04-23)
六義園にてコミスジ(2023-04-23)

 園内を歩いているとコミスジを見かけた。
 タテハチョウ科のコミスジは,滑空するような優雅な飛び方でひときわ目を引く。こんな出会いがあるのも嬉しい。