ガード下は浪漫

 ガード下という場所は漏れなくエモい。

 ここ新橋の高架下は賑やかだ。飲食店が入り人通りも車通りも多い。無骨な鉄骨の下にとても人間くさい施設がひしめいている状態がギャップ萌えだ。

新橋のガード下(2023-05-04)
新橋のガード下(2023-05-04)

 見上げると,工事の足場が組まれていたり,パイプが通っていたりと業務用無機質空間のようでいながら,通気口の網やその周辺の煤けた汚れ具合などに人間の営みと共に流れた時間の痕跡が刻まれて叙情的だ。

新橋のガード下(2023-05-04)
新橋のガード下(2023-05-04)

 そして,こことは真逆のガード下,郊外の人通りも車通りもなく商業施設とも無縁なガード下であれば,また異なった独特の風情がある。
 とかくガード下という場所はエモいと思う。

キューガーデンズの孔雀

 王立植物園キュー・ガーデンズの熱帯雨林温室パームハウス。
 ガイドブックでキュー・ガーデンズの紹介を見れば,大抵この温室の写真が載っている。言わばキュー・ガーデンズの顔とも言える施設だ。

 1848年に完成したこの温室は,船を逆さにしたようなデザインが特徴。ヴィクトリア朝様式のデザインで,熱帯雨林の環境を整えている。
 内部の熱を逃がさないように設計された美しいカーブを描くガラスの壁は,ハイドパークの設計で知られる建築家デシマス・バートン氏によるものらしい。
 とにかくとても絵になる温室だ。

キュー・ガーデンズ パーム・ハウス前(2008-05-23)
キュー・ガーデンズ パーム・ハウス前(2008-05-23)

 この堂々たる温室の前の道路のど真ん中に,1羽の孔雀が座り込んでいた。
 堂々たる様子で我が物顔の孔雀。おそらくここで飼われていて植物園内で好き勝手に過ごしているのだろう。

 珍しかったのでしばらく孔雀を眺めていた。
 すると,寛いだ様子だった孔雀はふとパーム・ハウスの方に視線を移し,おもむろに立ち上がってパーム・ハウスの庭から離れるように歩き始めた。丁度,小さな女の子2人とそのお母さん2人がこちらへ向かっており,どうやら孔雀は子供から逃げたかったらしい。

 案の定,孔雀を見つけた女の子たちは,怖々と,しかし興味津々といった感じで追いかけ始める。
 それに対し,孔雀は悠々とした様子で通路横のラベンダーの茂みの中へ入り込み,とことこ歩いて行ってしまった。孔雀は人が入れない場所をよく承知しているのだ。

 ちょっと面白い光景だった。