本の記録(2023-09)

 『源氏物語』を一旦終了し(そのうち再読するが)積ん読本などを消化。
 また,Amazon の Kindle Unlimitedで「創刊60周年 ブルーバックス特集」なる企画をやっていたため,普段だったら買わないけれどちょっと気になる本を読んだりしていた。


9月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:1568
ナイス数:39

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)感想
 砂糖が如何に奴隷貿易と一体化していたか,砂糖と紅茶の結びつきがイギリスで愛され続いた理由など,わかりやすかった。「つい最近までトリニダード・トバゴの首相であった歴史家エリック・ウィリアムズのいうとおり、「砂糖のあるところに、奴隷あり」だったのです。」とか「われわれイギリス人は、(略)地球の東の端からもち込まれた茶に、西の端のカリブ海からもたらされる砂糖を入れて飲むとしても(略)、なお、国産のビールより安上がりになっているのだ」など言葉の引用も的を射ており心に残った。
読了日:09月03日 著者:川北 稔

高瀬舟高瀬舟感想
 先日「本の要約サイト flier」にて要約が公開されたと聞いて,読んでみようかと思った。学校の生徒だった頃に国語の教科書で読んだことがあったが,内容はよく覚えていなかった。『舞姫』のような雅文体ではないので気楽に読めるし,青空文庫になっているので電子書籍なら無料だ。短い物語なのにこれを要約するのかと少々不思議。
 今も昔も変わらぬ普遍的な疑問,そして解決がとても難しい問題が主題になっている。罪とは何か。幸福とはどのような人のどのような状態であろうか。答が無い問に規則で答を与えられて我々は生きている。
読了日:09月03日 著者:森 鴎外

裏世界ピクニック7 月の葬送 (ハヤカワ文庫JA)裏世界ピクニック7 月の葬送 (ハヤカワ文庫JA)感想
 「月」とは冴月。いよいよヤバイ感じで目の前に現れる彼女をついに排除する決意を固めた空魚。彼女の大学のゼミ(文化人類学)の話は面白かった。登場する阿部川教授は著者の恩師である阿部年晴先生だとのこと。るなの声と鳥子の手,空魚の目と知識を駆使して葬送が行われた。
 物語のキーパーソンだった冴月がいなくなった世界で物語の方向性はどうなっていくのか?
読了日:09月09日 著者:宮澤 伊織

裏世界ピクニック8 共犯者の終り (ハヤカワ文庫JA)裏世界ピクニック8 共犯者の終り (ハヤカワ文庫JA)感想
 副題『共犯者の終り』で分かるがこの巻は丸々空魚と鳥子の関係についての物語。途中,空魚が1人でDS研で汀と話したり,新キャラの辻とお茶したりするが,あとは空魚が友人と恋人の違いに悩んで考え,鳥子との今後を考える。途中の空魚の考察,特に紅森との会話はとても面白かった。紅森は人の恋バナを食べて生きていそうな子だが意外と理屈っぽくしっかり物事を見て考えるタイプだとわかった。辻の裏世界への考察も興味深かった。最後の鳥子とのいちゃいちゃはかなり退屈だった。落ち着くところに落ち着いてちょっとつまらないと思った。
読了日:09月10日 著者:宮澤 伊織

山月記山月記感想
 虎になった李徴(りちょう)は旧友の袁傪(えんさん)と偶然再会する。李徴が袁傪に自分が虎になるに至った顚末を話す短い物語。李徴の自己分析とそれを受け止める袁傪は対照的な性格で,読者はどちらにも自分の一部を見ることになるのではないだろうか。漢文調の文体は格調高く美しく,しかし難しい。これを国語の教科書で読んだのは何年生の時だったのだろうか。流石に小学校ではなかった?
読了日:09月14日 著者:中島 敦

怪談の科学 幽霊はなぜ現れる (ブルーバックス)怪談の科学 幽霊はなぜ現れる (ブルーバックス)感想
怪談と言うより実話や文学作品の中から人間の不思議な行動を紹介し,それに精神医学的な解釈を加える本。1988年発売なので内容がかなり古く,今では異なった見解や解釈も多そうだ。引用作品や事例も令和を現代人たちには馴染みが薄いものが多かった。だが古今の名作はフィクションであっても精神医学的な解釈に耐えうるものでそれがリアリティになっているなどの話は興味深かった。
 様々な事例を精神医学的に解説しながら「科学的に説明できぬ事例」として乃木将軍の金沢出張の実話が紹介されており,それが怖かった。幽霊いるってこと!?
読了日:09月16日 著者:中村希明

食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病 (ブルーバックス)食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病 (ブルーバックス)感想
納豆は朝食べるのが良いか夜食べるのが良いか,運動は朝が良いか夕方が良いかなどなど,何はいつ頃食べてどう行動すれば良いなどの俗説は巷に溢れているし,経験上良いと思って実行している習慣なども人によって色々あると思う。しかし,それらが本当は正しい認識なのかどうか,現在の研究結果と照らし合わせても正しいことも多く,それが実験結果と医学的な解説により理解できたのは良かった。
読了日:09月30日 著者:柴田重信

それでも町は廻っている(1) (ヤングキングコミックス)それでも町は廻っている(1) (ヤングキングコミックス)感想
 タイトルだけは随分以前から知っていたが,同作者の『天国大魔境』のアニメ化がきっかけで読んでみた。メイド喫茶シーサイドでバイトする天然元気少女の嵐山歩鳥ちゃんを中心にまわっていく日常コメディ。実は探偵を目指しているという歩鳥は,実に憎めない性格でユーモラスで楽しい。担任の数学の先生とか幼馴染みの真田くんとか,一緒にバイトしているトシ子さんとか,周辺の人物も個性的だ。10年以上前にアニメ化されているので,そのうち配信を探してみよう。
読了日:09月30日 著者:石黒正数

それでも町は廻っている(2) (ヤングキングコミックス)それでも町は廻っている(2) (ヤングキングコミックス)感想
 温泉の話と全日本ギューニスト連盟とか。牛乳にはあられや焼きそばが合うらしいですよ,マジですか。あと死にかけた話とか紺先輩の風邪とか宇宙人とか狸のようなジョセフィーヌとか数学と探偵の共通点とか。楽しかった。
読了日:09月30日 著者:石黒正数


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本の記録(2023-08)

 8月前半は『源氏物語』の余韻を味わうため及び理解を深めるために『あさきゆめみし』の宇治十帖を再読。
 その後,さっさと読み終われる積ん読を消化し,以前から読もうと思いつつ読めずにいた『順列都市』に取りかかった。『順列都市』は単独でブログ記事にまとめようと思っていたが,難解過ぎて書けずにいるうちに数日経過してしまった。


 ブログ記事を書ける気がしないので『順列都市』について,非常にどうでも良い感想を一言書いておく。
 ヒロインのマリアにマジがっかりだった! 学問的な頭脳は優秀でも,感情的で攻撃的で人間性に安心感がない昔ながらのステレオタイプな女性。そういう残念な意味で,彼女は『三体』の後半のヒロイン程心にそっくりに思えた。程心も全くもってうんざりするステレオタイプな女性で,彼女がヒロインであるのが苦痛でたまらないけれど(ヒロインだからずっと出てくるし)物語の先は気になるから一応『三体』読むよ…って感じだったのだ。『三体』もヒロイン以外にも魅力的な女性は皆無だったが,『順列都市』も同じ。マリア以外に出てきた女性,ケイトやアンナもひどかった。

 感情お馬鹿ではない魅力的な女性がヒロインであるハードSFって何があるだろう? ぱっと思い付いたのは『最後にして最初のアイドル』かな。


8月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1610
ナイス数:36

あさきゆめみし(6) (講談社漫画文庫)あさきゆめみし(6) (講談社漫画文庫)感想
 『与謝野晶子の源氏物語』を読んだ後に宇治十帖を読むと,「匂宮が素敵すぎ!奴はもっと鬼畜である!」と思ってしまう。大和和紀さんがめちゃ原作を読み込んでいて,少女漫画にふさわしい解釈を施して凄いってことだと思う。
読了日:08月06日 著者:大和 和紀

あさきゆめみし(7) (講談社漫画文庫)あさきゆめみし(7) (講談社漫画文庫)感想
 『与謝野晶子の源氏物語』読後の再読。
 どちらにしても場に流されて泣いてばかりいておおよそ魅力的とは思えぬ浮舟だが,大和和紀さん解釈で少しそれが和らがぬでもない。後書きで大和和紀さんが「甘めの源氏物語」と書かれているが,そのおかげで読後の腑に落ちない感は緩和されている。やはり文字だけでは分からない服装や風景が見られるのは素晴らしいし,これを描くためにどれほどの調査検証が必要だったかと思い頭が下がる。
読了日:08月08日 著者:大和 和紀

バーナード嬢曰く。【友情篇】 (REXコミックス)バーナード嬢曰く。【友情篇】 (REXコミックス)感想
 既刊からの選り抜き傑作選ということで,全て既読の話。だが何度読んでも面白いし,彼女らの会話を読んでいるとその本もあの本も再び読みたくなるのであった。『渚にて』とか今まさに読んでみると思うこと多そうだ。
読了日:08月09日 著者:施川 ユウキ

第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書 1367)第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書 1367)感想
 日本の大手マスコミのニュース番組などが報道するウクライナとロシアのことは,非常に一方的で偏っていることは常々感じていたし,例えばウクライナのネオナチのことなどはほぼ解説されていないと思っていた。日本が西欧諸国と一緒にウクライナ側に立っているので仕方がない部分はあるが,表面的すぎて大手メディアの報道を聞いていても情報が少なすぎる。
 本書の著者はフランス人なので,やはりアメリカとウクライナが流した情報しか手にすることができない立場ではある。が,ヨーロッパの中から,またNATO加盟国の国民という立場から,そして人類学者であり歴史家である立場から解説されている。知らない視点が多々提示されており興味深かった。
読了日:08月13日 著者:エマニュエル・トッド

世界の神話 (岩波ジュニア新書)世界の神話 (岩波ジュニア新書)感想
 超あらすじで世界中の神話に触れることができる本。インド・メソポタミア・エジプト・ギリシア・ケルト・北欧・インドネシア・中国・オセアニア・中南米・北米・日本。
 当然多くの聞いたことがない神々の名前が次々と出てきてとても覚えられないし把握もできないが,世界中に似たような神話があることはよくわかった。世界の神話のごく源流になりそうな『ギルガメシュ叙事詩』は一読の価値がありそうである。
読了日:08月15日 著者:沖田 瑞穂

順列都市〔上〕順列都市〔上〕感想
 登場人物がコロコロ変わるし,時系列で進まないし,生化学の知識が要求される分子レベルの話が延々と続いたり,ミランコビッチや氷期・間氷期など地球科学の知識がサラリと取り入れられていたりして,難解だと思う。理系の素養がない人ほど詳細な理解が難しいのではないか。しかしその辺はそこそこに読み飛ばして行けば,それらのベースの上に後半は徐々に物語が現れて面白くなっていく感じ。評判の良いSFなので,下巻の展開に期待したい。
読了日:08月22日 著者:グレッグ イーガン

順列都市〔下〕順列都市〔下〕感想
 ダラムとマリアが作った世界が動き出し,7000年の時が経過。物語は順列都市を舞台にし,時を経て変化していったオートバースが問題になってくる。物語はやはり分かりにくかった。最終的に心に残ったのは,ありがちな倫理観とかそういった問題ではなく,永遠を生きるという哲学的な問題提起だった気がする。
読了日:08月28日 著者:グレッグ イーガン


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