本の記録(2022-01)

 半ばに大学の試験が終わったので,気になっていたものや中途半端だったものを一気に読んでいる。
 『人形の国』は完結したので最初から読み直したが,大変哲学的な物語だった。最終巻はわからなくて2回読んだ。もう少しゆっくりなペースで描いて欲しかった…。


1月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:1691

人形の国(1) (シリウスコミックス)人形の国(1) (シリウスコミックス)感想
 物語完結につき初巻から読み直し。4回目? 人工天体アポシムズ。アポシムズはシドニアと最後に通信した船で。この星の極寒の地表で暮らす人々と中心核との関係がようやく少しわかった。ゼゾの城を旅立ったエスロー&タイターニアの戦いの始まりの物語。
読了日:01月14日 著者:弐瓶勉
人形の国(2) (シリウスコミックス)人形の国(2) (シリウスコミックス)感想
 物語完結につき初巻から読み直し。3回目。地底信仰者でタイターニアを敬うイルフ・ニク国の少女,ケーシャという仲間を得たエスローは,白菱の梁を滅ぼしたリベドア帝国イーユを倒すが,新たな帝国の上級転生者,フューマとアイムが現れる。イーユの道具にされたビコの行く末はどうなるのか。
読了日:01月14日 著者:弐瓶勉
人形の国(3) (シリウスコミックス)人形の国(3) (シリウスコミックス)感想
 フューマは,リベドア帝国は中央から人間の権利を奪還するために活動しているとエスローを説得するが,エスローは応じない。ビコはエスローをイーユの仇と言い放ち離脱する。 ケーシャの故郷イルフ・ニクでカジワン王に会う。カジワン王には目的があった。一方帝国では帝国最強兵士と言われた転生者トオスが上級転生者に。エスローたちを追う帝国の正規人形ジェイトと最高位の自動機械,地ならし。エスロー達の死を確信する帝国の王…。
読了日:01月14日 著者:弐瓶勉
人形の国(4) (シリウスコミックス)人形の国(4) (シリウスコミックス)感想
 物語完結につき初巻から読み直し。2回目。エスローたちは壊滅状態のイルフ・ニクから出発。カジワン王の企みを止めるため追いかけるケーシャとエスローだが,衛星ウメの墜落に遭ってしまう。帝国のスオウニチコ皇帝は未来が読めなくなりつつあることを知り焦り始める…。
読了日:01月14日 著者:弐瓶勉
人形の国(5) (シリウスコミックス)人形の国(5) (シリウスコミックス)感想
 ウメの落下で瀕死の重傷を負って再生を待つエスローのためにケーシャとタイターニアは人形を狩りエナを集める。帝国はここぞとばかりにAMBを持つエスロー達の創作を続け,カジワンは地底に人形病再生者で独自の世界を作り,帝国の人形を狩り始める。帝国には新しくジェイトのクローンが出現?!
読了日:01月15日 著者:弐瓶勉
人形の国(6) (シリウスコミックス)人形の国(6) (シリウスコミックス)感想
 帝国の巨大クローン,アジェイトがけっこう可愛い。アジェイトを開発したタツシマには転生者にまつわる物語があった。ケーシャのところには帝国から逃げ出した正規人形ワサブがやってきて仲間入りする。やたらエスローに憧れていてウザかわいい。エスローとAMBを隠していた超構造体の箱が盗まれ,なんやかんやでエスローと皇帝が向き合うことになるのだが…。
読了日:01月15日 著者:弐瓶勉
人形の国(7) (シリウスコミックス)人形の国(7) (シリウスコミックス)感想
 変装して旅を続けるエスローとケーシャとワサブ,帝国のジェイトとリナイとトオス,そして真地底教会のジナタとタスリ,フィーサが入り乱れて混沌としてくる。地底強化は帝国の正規人形のみならず,生身の人間をも標的にしていて空恐ろしい。カジワンは正気ではなさそう? 皇帝は帝国の転生者処刑隊ヌーキーにエスロー殺害を命じるが,ヌーキーとジェイトは仲が良くなさげ。相変わらずアジェイトはかわいい。ジェイトは単に敵勢力にいるだけでまともな人ではないかという気がしてきた。
読了日:01月15日 著者:弐瓶勉
人形の国(8) (シリウスコミックス)人形の国(8) (シリウスコミックス)感想
 行商人姿で旅するエスローたち。真地底教会のカジワン王たちによる地上の人形病汚染が進み,帝国のジェイトたちも苦労する。カジワンが人形病を広めようとする理由としてケーシャが語る人形病の話は覚えておこう。タイターニアとスオウニチコ皇帝の過去。帝国内も各勢力の思惑でバラバラになっていく。ワサブをさらわれエスローは…。
読了日:01月16日 著者:弐瓶勉
人形の国(9) (シリウスコミックス)人形の国(9) (シリウスコミックス)感想
 ジェイトがだんだん人間らしくなっている? 彼女は皇帝を信じ地表の平和のために使命をこなしてきたのだった。  処刑隊のヌーキーがやってきた。ケーシャが…ワサブが…。教会は帝国を滅ぼす勢いで強大になり,ジェイトはエスローと話をする。皇帝とエスローの最後の戦いや地下の世界のこと。皇帝が初めて見た未来の実現。  とても哲学的な物語だった。
読了日:01月16日 著者:弐瓶勉
ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集 (楽園コミックス)ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集 (楽園コミックス)感想
 短編集。魔女とか移動するお墓の船とか,コロナウイルスと戦う異世界勇者一行とか,ニコライ・ゴーゴリの『外套』とか人狼公とか,色々な異形不思議がシュールにコミカルに描かれる独特な世界。
読了日:01月19日 著者:速水螺旋人
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 2 (MFブックス)無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 2 (MFブックス)感想
 最初のターニングポイントまで。ほぼアニメ通りに進むが,世界観が語られているのでアニメの捕捉にもなった。
読了日:01月20日 著者:理不尽な孫の手
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 3 (MFブックス)無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 3 (MFブックス)感想
 アニメ第1期の終わりあたりまで。ルーデウスがルイジェルトに信頼されるようになり,エリスと3人で冒険者パーティ「デッドエンド」として軌道に乗って旅ができるようになったところまで。  大陸の位置関係が説明され,各大陸での通過の価値や冒険者ギルドの仕組みなど世界の基本的な紹介はアニメを見る上でも補足になると思う。
読了日:01月27日 著者:理不尽な孫の手

読書メーター

ハーモニー

本の概要

  • ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
  • 著者 伊藤 計劃(いとう けいかく)
  • 出版 早川書房
  • 発売 2010/12/8

21世紀後半、“大災禍”と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

「BOOK」データベース

物語の背景

 本書は惜しまれつつ早逝した伊藤計劃氏の『虐殺器官』に続く物語。

 『虐殺器官』の後の世界が描かれているとも考えられ,そういう意味では『虐殺器官』読了後に読むとより良いかもしれない。が,本書単独で完結しており,物語を楽しむ上で『虐殺器官』読了の有無は特に問題とならない。

 2019年アメリカに端を発する「大災禍」を経て,核と未知のウイルスの蔓延で世界は崩壊寸前に至った。
 その教訓から,国と政府による世界は終わり,21世紀の半ば,世界には「大災禍」の再来を防ぐための新しいシステムが誕生している。人々の体には医療デバイスが埋め込まれ,新たな統治機構「生府」の下で,人は限りなく健康で幸福な生活を送るようになっていた。

 食事や見るべき映画読むべき本まで心地よく推奨されており,外れる行為があれば体の中のデバイスが教えてくれるのだ。
 生府に統治された地域では,建物も木々も心地よいピンク色。人々は不快なものに出会う機会もない。デバイスを埋め込まれた人間は一人一人が大切な社会のリソースであり,自分の体は社会のもの,自分のものではないのだった。

 そんな世界に居心地悪さを覚えていた女子高校生の霧慧(きりえ)トァンは,同じ気持ちを共有できる友人たち,御冷(みひえ)ミァハ・零下堂(れいかどう)キアンと出会う。
 同志だった3人のたどった運命は,各々があまりにも過酷なものだった…。


私が私であるということ
― SFというより哲学の書?

誰も彼もが互いのことを気遣うこのご時世。まさか、それを積極的に勘弁願いたいと思っている人間が身近に存在する、なんてことは、善意の押しつけに染まりきったわたしたちの世代には想像しにくい。仕方のないことだ。我らの世代は、お互いが 慈しみ、支え合い、ハーモニーを奏でるのがオトナだと教えられて育ってきたから。

位置: 1,457

 
 自分であるということは何だろう?
 人は何故「自分であること」を求めるのだろう?

 幸福とは何だろう?
 選択の自由があるのは幸せなことだ。
 しかし心地よいお勧めだけで事足りるならそれで幸せだろうか?

 医療デバイスが埋め込まれた病気が克服された世界。
 一見,この物語は自分の現在とかけ離れた絵空事であるかのように思える。
 しかし,よく考えてみると,決してそうではない。
 現代の日常にはレコメンドが満ちあふれている。

 Netflixでお勧めだけ見ていれば時間はどれだけだって潰せるだろう。
 Amazonで買い物をすれば次々とレコメンドが表示され,今まで知りもしなかった製品が突然欲しくなって買ってしまうかもしれない。

 時に面倒で煩わしい決断というステップを排除し,これらレコメンドに従っているだけの生活になったとして,それは不幸だろうか?


ユートピアとディストピアは紙一重

 所詮,我々が今現在持っている幸福だの不幸だのという価値観は,現在の社会で,この場所で生まれ育った者限定の価値観でしかない。
 不幸にも幸福にも絶対的基準は存在しないし,同じ人間であっても生まれた時代や場所が変われば異なった状況を幸福と感じるだろう。

 この物語が描くハーモニーの世界を,2021年の日本で暮らす私は『1984年』の世界と大して変わらないディストピアだと感じた。しかし,考えようによっては確かにユートピアなのかもしれない。

 選択する,意志決定を行う,そういったことと無縁に生まれ育って,病気も痛みも知らず暮らすなんて,そんなの生きているとは言えない!と思うのは,意志を持って選択し痛みや苦痛を感じて生きるのが当然だったからに過ぎない。
 そういったことを何も知らずに生まれ育ったのだったら,意志の存在も病気も同等な野蛮なことでしかないだろう。


アニメとコミック


 本作は,「Project Itoh」により劇場版アニメが2015年12月に公開されている。
 『虐殺器官』も2017年2月に公開となっており,Blu-rayにもなっている。またコミカライズもされているので,文字の本を読む時間はないが内容は気になるという方は,アニメやコミックから物語に入っても良いかもしれない。