解剖坂(かいぼうざか)―文京区

台地と低地が入り交じる東京の都心部は、
美しい坂道や階段の宝庫。
散歩しながら見かけた階段や坂道の記憶を残していく。

解剖坂(千駄木)

本郷台地の上を通る中山道と、根津の谷を通る不忍通り。
その中間の本郷台地中腹を通るのが、
団子坂上交差点と根津神社の裏門あたりを繋ぐ藪下通りだ。
森鴎外の散歩道だったという由緒ある藪下通りだが、
ここから本郷台地へ上る長い坂道が「解剖坂」だ。

解剖坂横の上千駄木町会の掲示板

風情ある素敵な階段坂道なのにおどろおどろしい名がついているのは、
坂の横が日本医科大学で、
実際に解剖学の教室がすぐ横にあったかららしい。

東京の坂道にはだいたい説明看板が立っているが
ここには坂の名前や由来を書いた看板がない。
穏やかではない名前であるための配慮ではとのことだ。

解剖坂の下から

坂の途中には民家もあり、人通りが絶えない。
誰もいない写真を撮るには随分と待たなければならなかった。

解剖坂の下からアップで

坂を途中まで上って見下ろしてみる。
向こうに見えている高いマンションは不忍通りだ。

解剖坂の中腹から

夕刻の比較的人通りが少ない時間帯に撮ったが、
朝は大学関係者が頻繁に行き来して大変活気がある。

解剖坂の上からアップで

坂を上りきったところには夏目漱石旧居跡
通称「猫の家」があるので、
解剖坂とセットで散歩コースに加えるのがお勧め。

鐙坂(あぶみざか)―文京区

台地と低地が入り交じる東京の都心部は、
美しい坂道や階段の宝庫。
散歩しながら見かけた階段や坂道の記憶を残しておこうと思う。

炭団坂を下り、宮沢賢治旧居跡を通って菊坂の谷を歩くと
本郷台地方面へ上る階段を幾つも通る。

本郷の階段

全ての階段や坂道に名前がついているわけでもないようだが、
地元の生活に根付いた階段らしい雰囲気が溢れている。

本郷の階段

鐙坂(あぶみざか)は、
やはり菊坂の谷と本郷台地を結ぶ斜面で、
先端はゆるやかなカーブを描いている。

鐙坂(あぶみざか)の名前の由来は
・鐙の制作者の子孫が住んでいた(『江戸志』)
・坂の形が鐙に似ている(『改撰江戸志』)
など。

鐙坂(あぶみざか)
鐙坂の説明板

坂の上の西側一帯には、
上州高崎藩主大河内(おおこうち)家
松平右京亮(まつだいらうきょうのすけ)の中屋敷があり、
屋敷跡地は右京山と呼ばれたとのこと。

坂上の左手には国語事典でお馴染みの金田一京助・春彦旧居跡。
右手の石垣の上には財務省 関東財務局 真砂住宅。
坂下には、100年以上の歴史を持つ銭湯や
昔ながらの雰囲気の理髪店が残る古い街並みが見られる。