直線で囲まれた空

 前回の記事,雨の団地の続き。
 団地と言っても一様ではない。時代と共に建物は変わっていく。

 緑地帯の中にエレベーターのない昔ながらの5階建てが並ぶ牧歌的なエリアから,しばらく歩くと最近風の高層マンション続くエリアに変わった。延々と連なる建物の様子はまるで屏風のようだ。

 それなりに大きく育った木々が建物よりずっと低い。
 おかげで視野はほぼ建物のベージュで占められ牧歌的とは言い難い。直線が溢れた風景は,幾何学的で整然とした印象を与える。

 団地という同じ単語で表される建物だが,新旧で脳の中に随分と異なる刺激を与えてくれると思う。

高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)

雨の団地

 雨の中を散歩したかったわけではなかった。
 雨の日だったが,ただ歩き,知らない風景を見たかった。

 たまたま思い付いて,都営三田線の終点付近に広がる団地の中を歩き回ってみることにしたのだった。

高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)

 かつて団地に住んでいたことがある。1980年代〜1990年代の頃だった。
 私の人生は若い頃からずっと引越を繰り返す巡り合わせで,2回ほど公団の団地に住む機会があった。その頃の記憶に焼き付いた風景と,今目の前にある見知らぬ団地が頭の中で重なっていく。どこの団地にも共通する風情は,年月を重ね繰り返された成熟した人の営みによって醸し出されている。

 自転車置き場も案内板も,建物の間に点在する緑の公園や大木に育った街路樹も,何故か懐かしくて優しい風景に見えるのだ。

 昨秋に公開された劇場アニメ『雨を告げる漂流団地』を,先日Netflixで視聴した。
 その物語の中にあったのも団地に宿る優しく懐かしい風景で,団地というものにそれを感じ共感する人って多いのだなと思わされた。

高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)
高島平団地(2022-08-20)

 玄関口に置かれた宅配便の台車までもが愛おしく見える。
 団地という空間はとても不思議だ。